松谷化学 ヒット商品を次々に生み出す難消化性デキストリン
難消化性デキストリンの製造方法についての特許です。
最近、特定保健用食品(以下トクホ)のコーラ「メッツコーラ」がキリンから発売され大ヒットとなりました。次いでペプシスペシャル、カナダドライジンジャーエールFIBER8000、など難消化性デキストリン含有飲料が続々と追随しています。
この他、以前から多くの食品に難消化性デキストリンは使用されてきました。例えば次の通りです。イージーファイバーに至っては、難消化性デキストリンそのもの、原料を詰め替えただけの商品です。難消化性デキストリンは安価で、無味無臭、水によく溶けるので、様々な食品に使用しやすいのです。
この難消化性デキストリンの全てを松谷化学工業が原料供給しているものと思われます。それは、松谷化学がいちはやく難消化性デキストリンの製造方法を確立して特許化したからです。現在は基本特許の権利は消滅していますが、他社が難消化性デキストリンの製造に参入することは簡単ではありません。その理由として、次のものなどが挙げられます。
1)難消化性デキストリンの製造は資本集約的なので、大きな設備投資が必要になる。
2)特許の権利期間中に松谷化学は製造方法や装置の合理化を当然行っているはず。他社には製造ノウハウがなくコストで敵わない可能性が高い。
3)存続中の周辺特許がある。
4)松谷化学にはこれまで築いてきた信用がある。
よって当分は「難消化性デキストリン=松谷化学」という状況は変わらないと予想します。
この難消化性デキストリンの開発のきっかけは、ファイブミニに始まった食物繊維ブームだったそうです。松谷化学は食物繊維を自分たちも製造できないかと考え、自社が得意なデキストリンを原料として新しい食物繊維を開発したのです。発明者は、次の手順でヒトが消化できないデキストリンを製造しました。
1)デキストリンを焙焼することで糖鎖を重合させて複雑でヒトが消化できない構造を生じさせる。
2)これにαアミラーゼを作用させて、ヒトが消化できる部分の構造を壊す。
3)さらにトランスグルコシダーゼとβ-アミラーゼを作用させ再重合させる。するとさらに複雑で消化しにくい構造が出来上がる。
4)これを精製する。難消化性デキストリンの出来上がり。
松谷化学の難消化性デキストリンは、食品原料ビジネスのお手本と言っていいと思います。その特許も非常に参考になります。
というわけで、次回は松谷化学が製造を新たに開始した希少糖についての特許を紹介します。
【特許番号】
特公平4-43624
【名称】
難消化性デキストリンの製造方法
【特許権者】
松谷化学工業
【課題】
食物繊維として充分に使用しうる難消化性物質を焙焼デキストリンから製造しうる方法を開発する
【請求項】
焙焼デキストリンを水に溶解し、これにα-アミラーゼを作用させ、次いでトランスグルコシダーゼを必要に応じβ-アミラーゼを共存させて作用させる事を特徴とする難消化性デキストリンの製造法。