おやつカンパニー「フランスパン工房」 やれることをやった結果が大ヒット
フランスパンを圧延して乾燥させたスナック菓子「フランスパン工房」についての特許です。
「フランスパン工房」は、おやつカンパニー社が発売した2007年のヒット商品です。発売当初は品切れになるほどの売れ行きで製造ラインを増強したようです。他社も続々と追随して、圧延していないパンスナックが発売されました。一時期ほどの勢いはありませんが、パンスナックはスナック菓子として定着した感があります。
しかしながら、「フランスパン工房」のように圧延された、薄く軽い食感のパンスナックは他社にはありません。それは特許のおかげです。パンを圧延して乾燥する、という広い範囲が権利化されています。
ヒット商品、ということでメディアで開発秘話が何度も取り上げられていました。それによると、圧延する装置があったので、様々な食品を圧延してスナック菓子を作ってみた。その中でフランスパンが美味しかったので発売したとのことです。いわゆるプロダクトアウトの発想です。その結果、生産能力を超えるほど、予想外にめちゃくちゃ売れたわけです。
しばしば、市場のニーズを起点としたマーケットインの発想が重要だと言われます。これに対し、最近ではi-phoneやGoogleのように「自分たちが良いと思うモノを創る」という"強気な"プロダクトアウトが称賛されることもあります。彼らは作りたいモノを創るために必要な組織能力を世界中から獲得していきます。すごいことです。
しかし、多くの食品企業にとってAppleやGoogleのやり方は現実的ではありません。たいてい、リスクを恐れずに挑戦するカリスマ的な経営者はいませんし、いたとしても「製品の欠陥⇒集団食中毒⇒倒産」という業界なのである程度は守りを固めざるをえません。β版なんてないし、修理もできませんよ。
また彼らの言う意味での優秀な学生を集めることも難しいでしょう。博士号を持った超優秀な科学者を活用する組織能力なんてないのです。例えば「ナノ粒子を使って新規な食品を創ろう!」としても、食べて安全かどうかわかりません。よっぽどの覚悟をしてビジョンを持ってないと、そんなことに投資できません。最新のテクノロジーというのは、「食べて安全かどうかわからない、またはお客様が安心して食べられるかわからない」という場合がほとんどですから。技術者は多くの場合、ローテクの組み合わせや洗練を競っているのです。
「限られた組織能力の中でいかに売れるものを開発するか」「開発を通していかに次につながる組織能力を向上させられるか」という発想での"弱気だけど前向きな"プロダクトアウトが重要だと思います。
おやつカンパニー社は、もともとは即席めんメーカーでした。この即席麺をスナック菓子「ベビースターラーメン」に転用してヒットさせました。また、即席麺を本来の売り場ではなく「ブタメン」という製品にして菓子売り場で販売し、独自のポジションを獲得しています。
このような"弱気だけど前向きな"プロダクトアウトを行うのが得意な会社だからこそ、「フランスパン工房」を創り出すことができたのではないでしょうか?
【特許番号】
P4148320
【名称】
スナック菓子の製造方法、スナック菓子、スナック菓子風食品
【特許権者】
株式会社おやつカンバニー
【課題】
じゃがいも以外の素材(例えば、パン)を用いながら、食感がポテトチップスに近いスナック菓子を得る。
パンを素材とした菓子としてラスクおよびラスクの応用品以外の菓子を提供する。
【請求項】
1)パンからなる素材を圧延した後、水分含有率が素材よりも少ない所定値となるまで加熱することを特徴とするスナック菓子の製造方法。
2)1mm以上の厚さのパンからなり、水分含有率が20~40質量%である素材を、対をなす加圧面間に入れて加圧しながら加熱することにより、厚さが1.0mm以上5.0mm以下で、水分含有率が1.0質量%以上5.9質量%以下の加工品を得る加圧加熱工程を有することを特徴とするスナック菓子の製造方法。
3)いずれか1項に記載の方法で製造されたスナック菓子。