味の素 冷凍餃子市場を支配するギョーザ
水なし油なしでパリッと焼ける、味の素のギョーザに関する特許です。
一般に加工食品は商品名にユニークな名前を付けて商標を取るものです。商標を取ることで同じ商品名を使用できなくなるからです。例えば味の素の「ほんだし」は商標登録されており、他社が使用することはできません。ですが、味の素の餃子の商品名は「ギョーザ」です。このような一般的な名称では商標を取ることはできません。この商品は商品ブランドに一切頼らず、「味の素」という企業ブランドのみで勝負しているのです。味の素社は、社を代表する商品として「ギョーザ」に絶対の自信を持っていることがうかがわれます。
実際、「ギョーザ」にはそれだけの商品力があります。単一の商品として年間売上約110億円、冷凍餃子市場のシェア約55%を占めます。
この「ギョーザ」は2012年のリニューアルで、油も水も加えずにフライパンで焼くだけでパリっとした羽つき餃子ができる仕様に改良されました。同時にTVCMなどのマーケティングにコストを投下し、冷凍餃子の市場規模と自社のシェアの拡大を図っています。
油と水を加えなくても、上手にパリッと焼けるようにするためにどのような工夫がなされているのでしょうか?ポイントは次の3つです。
- 餃子の表面に油や水を含んだ液を付けることで、調理時の油と水を不要にしている。
- 餃子表面の液に乳化剤を配合することで、フライパンにこびりつきにくくしている。
- 餃子表面の液にデンプンや卵白粉を配合することでパリっとした羽ができるようにしている。
特に新しいのは1)でしょうか。コロンブスの卵みたいなもので、知ってしまうと当たり前のことですが。2)、3)は真新しい技術ではありません。
過半を超えるシェアを持つ商品の仕様が「油も水も加えない」ものとなりました。お客様にとっては「油も水も加えない」ことが冷凍餃子にとって当たり前になっていくことでしょう。他社は追随したいと考えますが、特許を回避しなくてはなりません。現在の地位をさらに盤石なものとする技術といえます。
【特許番号】
P4670718
【名称】
冷凍餃子
【特許権者】
味の素株式会社
【課題】
フライパン調理時に油および水を加えることなく、また、ふたをかぶせたりとったりする煩雑な作業を一切必要せずに、良好な見栄えと食感を有する冷凍餃子に関する
【請求項】
餃子:穀物粉を有しないバッター:水または調味液の重量割合が100:5~30:20~100であり、餃子の焼き面が底面となるように配置したトレーに当該バッターを充填し、蒸し加熱することによりバッターよりなる第一層を形成した後、該トレーに水叉は調味液を注ぎ込み、冷凍することにより水又は調味液よりなる第二層を形成して得られることを特徴とするトレー入り冷凍餃子の製造方法。