食品特許を読みあさろう

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昭和産業「レンジでチンするから揚げ粉」 電子レンジでは澱粉がカリッとしないので

昭和産業「レンジでチンするから揚げ粉」についての特許です。鶏肉に粉末をまぶして電子レンジ加熱するだけで唐揚げを作ることができる唐揚げ粉で、ヒット商品になりました。

一般的に唐揚げは、小麦粉などの穀粉・片栗粉などの澱粉からなる衣を調味した肉に付けて揚げたものです。こうした唐揚げに必要な穀粉や澱粉、調味料等の材料をあらかじめ混ぜて販売されているのが「唐揚げ粉」です。

近年、家庭で揚げものを作ることが敬遠されています。調理の煩雑さや高カロリーを避けるためです。そんな中、ヒガシマル醤油社から「揚げずにからあげ」が登場しました。この商品を肉にまぶして油で揚げずにフライパンで焼くだけで、カリカリとした衣の唐揚げを作ることができます。衣に粒状のあられを使用することで、油で揚げたようなカリカリした食感を再現しています。手間を省いて美味しい唐揚げを作ることができる、としてヒット商品となりました。

「揚げずにからあげ」のヒットをきっかけに唐揚げ粉は、さらに手間がかからないように進化しました。それが昭和産業「レンジでチンするから揚げ粉」です。

従来の唐揚げ粉は電子レンジ調理を前提としてませんでした。電子レンジで調理すると衣がカリっとせずネトネトした食感になってしまいます。それは、衣の主成分が澱粉であるためです。澱粉は油で揚げたり、フライパンで焼いたり、しっかりと熱をかけて水分を飛ばした際にカリカリした食感になります。しかし、水分が十分に飛ばないと糊のようなネトネトした状態になります。電子レンジの加熱では唐揚げ表面の加熱温度がそれほど高くならないので、水分を十分に飛ばすことができないのだと考えられます。

 

そこで発明者は、澱粉以外のものでカリカリした衣をつくりました。具体的には、次の2つが重要なようです。

  • 加熱しなくてもカリッとしている粒状物(コーングリッツ、セモリナ及びパスタ粉砕物)
  • 水を吸収して加熱凝固する大豆加工粉末または乾燥卵白

この2つを組み合わせることで、油で揚げるよりも温度が低い電子レンジの加熱でも、しっかり固まってネトネトせずカリッとした衣ができるようです。澱粉を使わない衣、という発想が参考になります。

 

この商品のように調理の手間を省いたとしても、冷凍食品やお惣菜と比べればどうしても手間がかかります。それでも調理の簡便化という流れがあれば、そこに向けて調味料は進化します。このようにして手作り品と出来合い品の境界はあいまいになり続けているのです。その先に何があるのでしょうか?開発者は何を目指せばいいのでしょうか?簡便調理用の調味料は、すごく面白い分野だと思います。

 

【特許番号】

P5054839

【名称】

電子レンジ調理用から揚げ様衣用組成物

【特許権者】

昭和産業株式会社

【課題】

電子レンジ調理後、調理済み食品の表面にドライな食感と香ばしい風味を有するから揚げ様食品を得るためのから揚げ様衣用組成物、これを用いるから揚げ様食品の製造方法及びシート付着防止方法を提供する

【請求項】

(a)コーングリッツ、セモリナ及びパスタ粉砕物から選ばれる1種以上の粗粒物10~60質量%、

(b)大豆加工粉末5~50質量%、及び

(c)醸造調味粉末を含む粉末状調味料成分27~60質量%、

を含有する電子レンジ調理用のから揚げ様衣用組成物