食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

明治 チョコレートの製造技術は今も進化している

チョコレートが白く変色するのを防ぐシーディング法に関する特許です。

チョコレートはざっくり言えば、粉末と油脂が混合され油脂が結晶化したものです。滑らかな口どけの美味しいチョコレートを造る為には、おおまかに次の2点が重要です。

①粉末がざらつかないよう十分細かく粉砕されていて凝集していないこと、

②口の中で油脂結晶が素早く均一に融けること

①については、18~19世紀に「固形物を細かく粉砕する技術」と「凝集なく均一に油脂に分散させる技術」が確立されました。この技術革新によりざらつかない滑らかなチョコレートが造れるようになり、世界で一番愛されるお菓子として普及していきました。

②については、非常に複雑です。油脂は様々な構造をもつトリグリセリドの混合物です。そのため結晶化させる際の冷却温度が変わると結晶の構造が変わって、口どけが悪くなる、見た目にツヤがなくなる、といったことが起こります。そのためチョコレートを造る際には、温度を微妙に上げたり下げたり、厳密に温度管理しながら冷却固化させていきます。この工程をテンパリングといい、チョコレート製造でもっとも重要な工程と言われます。

 

発明者はこのテンパリング工程を簡略化しても、美味しいチョコレートが造れる可能性を示しました。シーディングといって、結晶が形成される際の核となる物質を加えることで、温度管理に頼らず均一な結晶を形成させます。

具体的には溶解したチョコレートにある種のジグリセリドの粉末を加えています。するとジグリセリドを核としてトリグリセリドの結晶が育って固化します。

またこの方法を使うと、ブルーミングといわれるチョコレートが白く変色するのを防ぐことができます。ブルーミングは、チョコレートが高温にさらされて柔らかくなり、再度冷やされて固化する際に生じます。この白い部分はトリグリセリドの中の結晶化しにくいものが分離して固化したものです。ジグリセリドを添加していれば、結晶化が促進されるので分離が防げる、というわけです。

 

この特許は1992年に出願されました。特許は出願から20年で権利が消失します。特許切れにより、この技術は誰でも利用することができるようになり、業界全体の技術レベルを向上させました。チョコレートの製造技術は今も進歩しているのです。

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【特許番号】

特公平7-83680

【名称】

チョコレート及びチョコレートの製造法

【特許権者】

株式会社明治

【課題】

1)適正なテンパリング処理を施しても従来達成不能であった高温耐性のチョコレート、より詳しくは、体温付近の高温に一定時間曝した後でもブルーム発生を抑制し得る、つまり高温に暴露された後でも艶のあるもとのチョコレートに自己復帰するチョコレートを得る。

2)テンパリングを省略乃至簡便化した方法でカカオ脂の風味を活かした製品を製造可能にすることにより、工程数の減少になると同時にエネルギー的にも装置的にも極めて有利になるチョコレートの製造方法を提供する。

【請求項】

炭素原子数18個以上の不飽和脂肪酸と炭素原子数20~24個の飽和脂肪酸からなる2-不飽和-1,3-ジ飽和グリセリドの安定結晶型粒子を含有するチョコレート。