食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

【おいしい牛乳(1)】明治おいしい牛乳はなぜ美味しいか

明治おいしい牛乳の製法についての特許です。

明治おいしい牛乳は2002年に発売されましたが、当時これを飲んで「すごい美味しい!」と感動した覚えがあります。今では年間売上高約480億円、シェア約8.5%のロングセラーの大ヒット商品です。

 

スーパーなどで市販されているほとんどの牛乳は、130℃2秒といった高温の条件で殺菌されます。この条件で殺菌すると、牛乳の成分が化学反応してジメチルスルフィドなど"牛乳臭さ"の原因となる物質が生じます。これら臭さの原因物質を発生させる化学反応には、牛乳に溶け込んでいる酸素が関与しています。そのため、牛乳に窒素ガスを吹き込むなどして溶けこんでいる酸素を追い出し、そのあとに殺菌すれば牛乳臭さを低減できることが知られていました。

 

ところが、牛乳には泡立ちやすい性質があります。窒素ガスを吹き込むと泡が発生します。大規模な製造ラインではこの泡が問題となります。泡がタンクや配管からあふれたり、ポンプによる流量制御を不能にしたり、うまく流れないので滞留時間が長くなって雑菌の温床となったり、、、様々な悪さをします。他の食品であれば添加物「消泡剤」を加えて泡を抑えることができます。しかし牛乳には添加物を使用できません。法令で禁止されているからです。そのため、他の方法で泡の発生を抑えることが必要でした。

 

発明者は、牛乳のタンクに窒素ガスを吹き込むとともに、タンク上部から牛乳を噴霧しました。この噴霧した牛乳で泡を壊すことで、泡が過度に蓄積するのを防ぎました。この方法は低コストで大規模な製造ラインに導入できます。こうして、美味しい牛乳が製造できるようになったのです。

 

ちなみにこの特許は1999年に出願されており、2019年に特許が切れます。以降はあらゆる牛乳が「おいしい牛乳」になるかもしれません。そうなれば、「すごくおいしい牛乳」を開発しないと差別化できません。

技術はさらに発展し、食品はどんどん美味しくなるのです。

 

【特許番号】

P3091752

【名称】

牛乳等の溶存酸素を窒素ガスと置換して殺菌する方法及び窒素ガス置換装置

【特許権者】

明治乳業株式会社

【課題】

低コストで、且つ大きな設備を必要とすることなく、実用的な方法及び装置を提供する

【請求項】

牛乳等の溶存酸素を窒素ガスと置換して殺菌する方法において、牛乳等に窒素ガスを直接混合分散する手段と、窒素ガスを混入していない牛乳等を、窒素ガス雰囲気下の窒素ガス置換タンク内に貯留された窒素ガスを混合分散した牛乳等に、上方からノズルで噴霧する手段とを併用して、溶存酸素と窒素ガスとの置換により牛乳等の溶存酸素量を低下させた後、殺菌することを特徴とした牛乳等の溶存酸素と窒素ガスと置換して殺菌する方法。