赤城乳業 ガリガリ君には特許がない!
ガリガリ君に関する特許を調べてみました。しかし、ガリガリ君に関連する特許は存在しませんでした。
そこで製造者の赤城乳業が保有している唯一の特許、カカオ脂を高含有したソフトクリームに関する特許を紹介します。
暑過ぎて「ガリガリ君」を食べなきゃやってらんない。そんな日が続いています。ふと「ガリガリ君ってどうやって造ってるんだろう?」と疑問に思って特許検索をしてみました。すると「ガリガリ君には特許がない!」ということがわかりました。それどころか、製造者の赤城乳業はたった1件しか特許を保有していませんでした。
特許などなくても、他社の追随をゆるさないガリガリ君のすごさに感心した次第です。
じゃあ唯一の特許ってどのようなものだろう、と気になって読んでみました。
ソフトクリームにカカオ脂を多く配合しようとすると、カカオ脂の性質上、脂肪の粒が凝集して大きな粒となってざらついたり、流動性をなくしたりするそうです。そこで、発明者は低HLBシュガーエステルとカカオ脂を混合した後、高HLBシュガーエステルと水系原料を混合することでカカオ脂の凝集を防ぐ方法を見出しました。赤城乳業からはソフトクリームも販売されているので、この特許の技術が生かされているのかもしれません。
赤城乳業が特許出願をし始めたのは2006年からのようで、ここ数年は再び出願しなくなっています。特許を出願するためには、技術を開示する必要がありますので、出願せずに技術を隠しておくというのも良い手です。実際に、ガリガリ君は特許がないのに類似製品が出回っていません。
一般的な理想論を言えば、特許で守るところ、特許を取らずに秘密にしておくところを使い分けるべきなのでしょう。
しかし、現場の技術者、開発者だけでは精度よく判断することはできないと思われます。なぜなら、「利益につなげるにはどうしたらいいか?」という理想的な基準だけでなく、現場では例えば次のようなバイアスが働くからです。
- 特許出願には手間がかかる。だから出願したくない。
- 特許出願は業績評価にプラスになる。だから無駄な特許でも出願したい。
このような現場のバイアスに左右されず全社最適の仕組みを作るのは容易ではないでしょう。ならば、いっそ「特許は取らない!」という方針が良い場合もあると思います。現場が迷いなく動けますので。
ただし、特許出願をあまり経験していない現場に「これからはどんどん特許とろうぜ!」と言っても、困難を伴うはずです。組織を変えるには時間やコストもかかります。もしかしたら、赤城乳業はそうした過程にいるのかも、、、などと特許文献を調べながら妄想を膨らませた次第です。
【特許番号】
P5219491
【名称】
ソフトクリームミックス用組成物およびその製造方法
【特許権者】
【課題】
肪球の集合体の生成を抑制して粘度の低減を図り、さらに、フリーザー適性を有しつつ、従来のソフトクリームと同等の滑らかな食感を保持する、カカオ脂を高配合したソフトクリームミックス用組成物およびその製造方法を提供する。
【請求項】
カカオ脂とHLB値が1のショ糖脂肪酸エステルである第1の乳化剤とを含み水分を含まない第1の原料を混合して得られる第1の混合物と、
HLB値が10のショ糖脂肪酸エステルである第2の乳化剤と水分と乳製品とを含む第2の原料を混合して得られる第2の混合物と、
を混合して得られることを特徴とする、ソフトクリームミックス用組成物。