食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

無洗米の製造方法をめぐる戦い3 サタケはタピオカで米をとぐ

前々回前回にわたって、無洗米では後発である東洋精米(東洋ライス)の特許について紹介しました。今回はパイオニアであるサタケの技術について紹介します。

ntwp50b外観

サタケは加水方式での無洗米製造技術を進化させ、NTWP方式という方法を確立しました。

加水方式による無洗米製造は、従来から人の手で行われていた「米を研ぐ」という作業を機械化するものです。着眼の発想に飛躍は感じられません。

ですが、米を研ぐ際に水が果たす機能を分解して考えたところに、NTWP方式の新しさや面白さがあります。

 

手で米を研ぐ際に水が果たす機能は「糠をとる」という単一のものだとみなしてしまいがちです。

しかし、糠がとれる過程を分解してみると次の通りになります。

  1. 米表面に付着した糠をやわらかくふやかす。
  2. 米同士の摩擦で糠を削り取る。
  3. 削り取られた糠が米に再び付着しないようにする。

このうち、水の役割は1と3です。3に水を使うので、とぎ汁=汚水が発生するのです。

3で水の代わりにタピオカを使用することとしたのがNTWP方式です。

 

少量の水を加えて表面の糠を柔らかくした米と、粒状のタピオカを混合して糠を削ります。タピオカがボールミルのボールの役割をするわけです。一般的なボールミルのボールは金属を使いますが、なぜタピオカを使ったのでしょうか?理由は次の通りと考えられます。

  • 金属ボール同士の接触で金属が削れて、金属異物が米に混入する危険性がある。なので、混入しても無害なボールを使う必要がある。
  • 混入して無害なもの=食品素材を使う必要がある。ただしボールは消耗品なので安価でなければならない。
  • 削り取れた糠を取り除くために、糠が付着する性質をもったボールを使用する必要がある。

これらの条件を満たすものとして、タピオカを見出したわけです。

 Ball mill.gif

NTWP方式は消耗品として使用済みタピオカが発生します。その点で、ビジネスとしては東洋精米のBG方式の方が勝っているように感じます。東洋ライス(東洋精米)のホームページでは、無洗米の7割がBG方式だと述べられています。(当事者が発表している数字なので鵜呑みにしない方が良いかもしれませんが。)、数件のスーパーを回ってお米売り場を調べたところ、NTWP無洗米とBG無洗米が半々ぐらいで並んでいました。

 

また、無洗米のゆくえを考える上では一般の精白米のことも考える必要があります。近年、精米技術が向上しているので、昔の白米ほどしっかりと研ぐ必要がなくなっているそうです。ある割烹の板長は「研ぐという言うより、軽く1、2回すすぐ程度の方が美味しい」と言っていました。私自身もそう感じます。であれば、無洗米を使うメリットは小さくなってしまいます。

 

ともかく、お米大好き人間として、お米周辺の技術を今後も見守っていきたいと思う次第です。あと、Wikipediaの無洗米の記事は、各社の利害関係者がアレコレ書き込んだ感じが出ていて、ニヤニヤしながら読めます。オススメです。

 

【特許番号】

P4411645

【名称】

無洗米の製造方法及びその装置

【特許権者】

株式会社サタケ

【課題】

精時に米粒表面への糠の再付着を減少させるとともに、澱粉層を傷つけることなく、微細溝には残存する糠のない無洗米の製造方法及びその装置を提供する

【請求項】

柔軟弾性部材で被覆した一対のロールに玄米を複数回通過させて精白米に加工し、得られた精白米に水分を添加してその表面を軟化させるとともに、該精白米と60℃以上に加熱した粒状物とを混合し攪拌して精白米の研磨を行い、精白米表面に残存する糠を粒状物により剥離するとともに該粒状物に吸着除去した後、精白米と粒状物とを分離することを特徴とする無洗米の製造方法。