食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

無洗米の製造方法をめぐる戦い2 東洋ライスは水を使わずに米をとぐ

前回、東洋精米(現・東洋ライス)*1の「洗い米特許」について紹介しました。この特許は、同業のサタケによる無効請求により無効化されました。

しかし、東洋精米は「洗い米特許」の加水方式を超え、一歩先の技術へ進んだのです。

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まず、サタケの方法や東洋精米の「洗い米特許」は、ともに水を使って糠をとる加水方式です。しかし加水方式で無洗米を作るには次の問題点がつきまといます。

  • 糠を除去するために排水が生じる。よって通常の精米工場にはない大規模な排水設備が必要となる。
  • 水分が付着した箇所は菌やカビの温床になる。よって清掃の負担が増える。
  • 米に含ませた水分を乾燥する必要がある。よって、乾燥のためのエネルギーが余分にかかる。

 

そこで東洋精米は水を使わないBG方式を開発することで上記の問題点を解決しました。その詳細な方法は東洋ライスのホームページに述べられています。

ざっくりと言えば、次の通りです。

  1. 米を輸送しながら金属筒の内側表面に打ちつけて、通常の精米では取り除けない肌糠を金属壁に付着させます。
  2. この肌糠は粘着性をもっているので、壁に付着した糠に衝突した米の肌糠がさらに付着します。
  3. そうして金属壁面状で次々に肌糠同士がくっついていきます。
  4. ある程度大きく成長した肌糠の塊ははがれ落ち、米と混ざります。
  5. 最後に米と肌糠の塊を選別して、肌糠のとれた精白米=無洗米を得ます。

もちろんこのBG方式の特許を取得して他社の模倣を防いでいます。

 

このBG無洗米製造機をひっさげて、東洋精米は無洗米製造機市場に参入しました。そして、この技術革新で無洗米を世の中に普及させたのです。

認証マーク「エコメちゃん」

東洋精米は特許以外の方法でも無洗米を囲い込んでいます。東洋精米が中核となって無洗米協会を設立したのです。協会では認定マークを制定しました。

この認定マークの認定基準は、BG方式以外では取得がしにくいように作られています。

以下に認定基準を抜粋します。

無洗米の処理工程で、米(米の一部も含む)・空気・水以外は添加されていないこと

無洗米の処理工程では、汚水、汚泥が出ないこと

わかりやすく言い換えると

製造工程でタピオカを添加するサタケのNTWP方式(次回紹介します)は認定しないよ。

排水が生じるSJR方式を使う場合は、排水処理設備に多額のコストをかけなきゃ認定しないよ。 

という意味になります。

そして、無洗米協会の名義で「認定マークのない無洗米は品質に問題があるよ」というPRやCMを行いました。鬼ですね。ちょーカッコイイ。

 

以上のように、東洋精米は技術もスゴイですが、それを技術で優位に立つための仕組み作りもスゴイです。かくして、BG方式は無洗米製造方法の主流を勝ち取ったのです。

 

次回は、もう1つの主流、加水方式にこだわったサタケのNTWP方式について紹介します。

 

【特許番号】

P4485756

【名称】

無洗米の製造方法及びその装置

【特許権者】

株式会社東洋精米機製作所

【課題】

排水処理を必要とせず、「水洗式」と同等の除糠度で、且つ、安定した高品質の無洗米を製造できる無洗米の製造方法及びその装置を提供する

【請求項】

攪拌装置を構成する筒体内に装填された攪拌ロールの外周に、高突条及び低突条を軸方向に交互に配列し、該低突条は回転作用により、精白米を筒体の内周面が構成する硬質物に打ち付けて、該精白米の肌面の微細な陥没部に入り込んで付着している肌糠を、該肌糠の粘性により前記硬質物の内周面に付着させて抜き出し、更に、該低突条の周方向反対側において、筒体の内周面に近接して回転する高突条の回転作用によって、精白米群を筒体の内周面の硬質物に擦り付けながら回転させて、該硬質物に付着した肌糠を削り落とし、再び精白米に混在させ、前記作用を繰り返して、精白米の肌糠の除糠を行うことを特徴とする無洗米の製造方法。

*1:現在は東洋精米とトーヨーライスが合併し東洋ライスになっています。