食品特許を読みあさろう

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キリン「すぅーっと茶」 副交感神経を働かせてリラックスさせるユーデスモール

キリンの「からだ想い茶 すぅ~と茶」についての特許を紹介します。

この商品はユーカリ精油成分を添加した紅茶飲料です。ネーミングから察するに花粉症の鼻がすぅーっとすることを狙ったのではないかと推測します。薬事法の関係でメーカーは肯定しないと思いますが。

      

「すぅーっと茶」は基礎研究の成果を生かした商品とのことです。キリンはビールの原料であるホップの成分を研究しているようです。その中で、β-ユーデスモールという成分がTRPA1というカルシウムイオンチャネルに作用することで「冷たい」という感覚を引き起こすことを発見しました。このβ-ユーデスモールはビールの冷涼感やスパイシー感に寄与しているそうです。同じ成分はユーカリにも含まれています。ユーカリオイルがすぅーっとして冷たく感じるのは、β-ユーデスモールが一因と言えます。

またβ-ユーデスモールには、自律神経調節作用があるとのことです。リラックスを感じさせる副交感神経を働かせ、興奮を感じさせる交感神経の活動を低下させるそうです。

「すぅーっと茶」はβ-ユーデスモールを含むユーカリ成分を配合しているので、飲むとすぅーっとするわけです。また、β-ユーデスモールの自律神経調整作用で飲んだ人にリラックスしてほしいという想いも込められているのだと想像します。

  ←詳しくはキリンのニュースリリースへ。

 

ところが実は「すぅーっと茶」はすでに製造終了しています。季節限定販売なのかもしれませんが、売れたという話も聞きませんし、「からだ想い茶」というブランドの他のアイテムも同様に製造終了しています。

基礎研究と商品開発を結び付ける難しさを感じます。「花粉症の鼻が通る」とか「自律神経調整作用でリラックス」といったコピーは、薬事法により食品で謳うことができません。そのような効果を謳うことができるのは、特定保健用食品(トクホ)だけです。しかし、トクホを前述のような効果で取るのは非常に困難です。だから、効果は謳わずに「消費者が自発的に効果を想像してくれる」ような売り方が必要になるわけです。「すぅーっと茶」はそれに失敗した、ということです。

 

しかしながら、β-ユーデスモールに関する研究成果は興味深いです。特許も取得しています。「すぅーっと茶」とは違った商品、売り方で再チャレンジ仕掛けてくるかもしれません。

基礎研究をいかに商品開発に活かすか、というのは研究開発の大きなテーマの1つです。再チャレンジの結果の成否に関わらず、参考になることは間違いありません。楽しみに注目していきたいと思います。

【特許番号】

P5153931

【名称】

ユーデスモールを含有する非アルコール飲料

【特許権者】

キリンホールディングス株式会社、麒麟麦酒株式会社、キリンビバレッジ株式会社

【課題】

非アルコール飲料において、簡便かつコスト面に優れた手段により、冷涼感に優れた爽快な味覚の飲料を提供する

健康志向の観点から、健康飲料としてマイルドな条件で、健康機能を奏する機能性飲料を提供する

【請求項】

β-ユーデスモールを有効成分とし、該有効成分の飲料中の含有量が5~100ppbであることを特徴とする自律神経調節作用を有する冷涼感に優れたアルコール含有量が1%未満である非アルコール飲料。