食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

ハウス食品 イグノーベル賞をとった玉ねぎ研究の特許について

2013年のイグノーベル賞が発表されました。日本人の受賞は7年連続だそうです。ユニークな研究が多く、とても面白いです。

受賞した研究全体は2013年イグ・ノーベル賞の研究をひと通り見てみました。-蝉コロンがわかりやすいです。

 

そのうち食品に関係する研究「タマネギの催涙因子生成酵素の発見」の特許について紹介します。。授賞対象となった論文は“An onion enzyme that makes the eyes water”Nature, Vol. 419, No.6908, pp.685, 17 October 2002のようです。

研究内容の詳細は【詳説】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」 - 化学者のつぶやき -Chem-Station-がわかりやすいです。

 

ところで「基礎研究をいかにビジネスに結びつけるか」というのは食品業界に限らずR&D部門共通の課題ではないでしょうか?

ハウス食品では玉ねぎについて基礎研究に取り組んで、今回の「タマネギの催涙因子生成酵素の発見」につながったようです。この成果は論文だけでなく、特許化されています。関連特許が数件出願されていますが、最初のは1997年、Natureに発表される5年前に特許出願されています。

 

特許は催涙因子生成酵素を単離して性状を明らかにすることで、この酵素そのものについて取得されています。単離手法は、すりつぶした玉ねぎからカラムクロマトグラフィーで分離し、酵素基質でアッセイするという一般的な方法です。この特許が出願された1997年の時点では酵素を単利しただけで配列は特定していないようです。

 

さて、この特許文献には応用例が記載されています。それは次の3つです。

  1. 玉葱パウダー:酵素反応を調整して基質成分や反応生成物の濃度を変えることで、今までにない風味の玉ねぎパウダーを作ることができる。
  2. 玉葱フレーバー:上記と同様に酵素反応を調整してフレーバーを作る。
  3. 目薬:酵素反応によって得られた催涙成分を使用し、涙欠乏症(ドライアイ)等の治療用の目薬を作る。

また、イグノーベル賞関係の報道によると、酵素の働きを止めることで「切っても涙が出ないタマネギ」を作ることに成功しているとのことです。

 

一定の成果は得られていますが、ビジネス面ではこれから、と言ったところでしょう。今回のイグノーベル賞受賞がPRになって、ビジネスにつながっていくかもしれません。

紹介した特許の出願は1997年となっています。発見から15年以上経過しているわけです。基礎研究をビジネスに結びつけることの難しさが想像できます。

 

【特許番号】

P3330305

【名称】

玉葱の催涙性物質生成酵素

【特許権者】

ハウス食品株式会社

【課題】

玉葱等に存在する催涙性物質LFの前駆物質に作用して当該催涙性物質LFを生成する新規催涙性物質生成酵素及びその製造方法を提供する

【請求項】

玉葱等に存在する含硫化合物のPeCSOから酵素アリイナーゼの共存下で催涙性物質Lachrymatory Factor を生成する作用を有する催涙性物質生成酵素であって、以下の理化学的性質を有する催涙性物質生成酵素。

(1)作用;酵素アリイナーゼの共存下で、玉葱等に存在するPeCSOから生成した催涙性物質生成酵素の基質に作用して催涙性物質のチオプロパナール-S-オキシドを生成する、

(2)至適pH;pH5.0~6.0、

(3)分子量;約18000(SDS-PAGE電気泳動法)