食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

明治 乳児用ミルクをキューブ状に成形する

明治の乳児用ミルク「ほほえみ らくらくキューブ」についての特許です。このミルクは粉末ではなくキューブ状になっています。キューブ1個が50ml用の大きさになっているので、計量スプーン等を使うことなく簡単にミルクを作ることができます。

乳児用ミルクは日本で数社が販売していますが、実は中身に大差はありません。なぜなら、栄養が母乳の組成と同じにすることが法令で定められているからです。そして中身の処方は行政に提出され、認可を受けることが必要です。そのため、中身の成分を工夫できる余地は小さいのです。(もちろんそれでもメーカーは努力しており「アレルギーが出にくい」などの特徴を打ち出している商品もあります。)

中身で競う余地があまりないという状況では、製品での差別化ではなく、価格や営業での競争になることが一般的に考えられます。幼児用粉ミルクの場合、大部分のお客様は「産科で勧められた粉ミルクを値段が高くても買い続ける」という特性を持っています。ですので、大部分のメーカーは「販促費を投入して産科に自社のミルクを採用してもらい患者に勧めてもらう」という戦略を採用しています。逆に、一部のメーカーでは「販促費をかけず、商品の価格を下げる」という戦略を採用しています。どのメーカーがどちらの戦略を採用しているかは、販売価格に大きな差があるので一目瞭然です。産科への販促には多額の費用がかかる、ということがうかがい知れます。(↓同じ800gでも価格がだいぶ違います。)

しかし、明治は製品での差別化を図りました。計量や持ち運びなどが煩雑だった粉ミルクをキューブ状にしたのです。キューブ状にするという発想は特別なものではなく、数十年前からあったようです。しかし、実現手段がありませんでした。というのは次の制約があったからです。

・幼児用ミルクの特性上、使用できる原料がほとんど決まっている。

・圧縮成形の圧力が強すぎるとお湯に溶けなくなる、油浮きする、脂質が酸化しやすくなる、といったデメリットがある。

・圧縮成型の圧力が弱いと、成形できない。

そこで発明者は、次の方法で粉ミルクをキューブ状に成形しました。この発想は粉ミルク以外にも使えそうな気がします。スゴイ発想です。

・粉ミルクを型にいれて弱く押し固める。

・湿度90~100%の環境下で型に入れた粉ミルクの表面を溶解させ、結着させる。

・結着させた粉ミルクを高温低湿度で乾燥させる。

 

この発明により、明治は他社の真似できないキューブ状幼児用ミルクを実現しました。とても便利なので、お客様だけでなく産科医への販促でも優位に立っていると推測します。販促で優位に立って、キューブ状に成形するための加工費を吸収しているのでしょう。

 

【特許番号】

P4062357

【名称】

固形乳,及びその製造方法

【特許権者】

株式会社明治

【課題】

好適な溶解性と強度とを有する固形乳及びその製造方法を提供する

【請求項】

空隙率が,30%~50%であり, 脂肪として,乳化した脂肪と遊離脂肪とを含み、

前記遊離脂肪の含有率が0.5重量%~4重量%である固形乳。