食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

敷島製パン 「超熟」はどのように造られているか?

敷島製パンPASCOの食パン「超熟」についての特許です。湯種法と呼ばれる、生地に熱水を加えて小麦粉をα化させる製法を大量生産できるようにしたもので、敷島製パンでは「超熟製法」と名付けているようです。

湯種法は、手作りの製パンでは昔から行われてきた製法です。生地の澱粉をあらかじめα化させるので、食感がもっちりして口どけが良くなります。さらに、α化した澱粉は小麦粉由来のアミラーゼで一部が分解されるなどして甘味のある特有の風味が出ます。

しかし生地の温度が高くなることで、グルテンが熱変性してしまいます。湯種生地をそのまま食パンにすると、グルテン形成が弱いために保形性が足りず、食パン上面が谷型にしおれてしまいます(ケービング)。

 

そこで、発明者は湯種法で造ったパン生地を低温で15時間以上72時間以下の長時間保存することで、熱変性していないグルテンの形成を進行させればケービングが生じないことを見出しました。またこの熟成過程でもっちりとした食感や好ましい風味が増すこともわかりました。

このようにして敷島製パンは湯種法による食パンの量産化に成功し、大ヒット食パン「超熟」が生まれました。また食パン以外にも「超熟」ブランドのパンを展開しています。ちなみに私は超熟イングリッシュマフィンがものすごく好きです。食べる度に床を粉だらけにして妻に怒られます

その後、業界最大手の山崎パンが同じ湯種法を使った食パンを発売して追随します。

次回は山崎パンがどのように敷島製パンの特許を回避したのかを紹介したいと思います。

 

 

【特許番号】

P3167692

【名称】

パン類の製造方法

【特許権者】

敷島製パン株式会社

【課題】

もっちりとした食感を有し、しかも良好な焼成状態を得ることができるパン類の製造方法を提供する

【請求項】

小麦粉に対して熱水を加えて混捏して中間生地を調製する工程と、

この中間生地あるいはこの中間生地を含むパン生地を-5℃以上15℃以下の範囲で15時間以上72時間以下保存する工程、

とを備えるパン類の製造方法。