食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

快眠活魚 魚の神経を針で刺して運動機能を破壊する

活魚の神経を針で刺すことで絶命させずに運動機能だけを破壊する方法、およびその状態で鮮魚を輸送する方法についての特許です。

この技術は旬眠おさかな企画の旬眠活魚として提供されているようです。

 

従来、漁獲された魚の鮮度を保つには、①生かしておく、②活き締め(即殺)する、という方法がありました。

しかし、それぞれの方法には次の様な欠点があります。

①生かしておく

・水槽の魚が死なないように酸素を供給するなど一定の環境を保持する必要がある。

・魚種によって特有のケアを必要がある:トラフグやハモは共食い、サバやイワシは止まると呼吸できず死ぬ、など

・生かしておくことができても、ストレスで味が落ちる場合がある。

②活き締め(活魚の神経を短時間で破壊して即殺することで死後硬直を遅らせる技術)

・神経を破壊しないものと比べて、死後硬直を遅らせることはできるが、それでも死後硬直は進行する。

・神経を破壊する際の傷が残る*1ので、姿造りにする場合に商品価値が落ちることがある。

 

そこで、発明者は①と②の欠点を解消するため、針で神経の一部を破壊して絶命させずに気絶させる方法を創りました。針を刺す箇所は鰓蓋を開けた部分であり、さらに針が細いため傷口はほとんど目立たないそうです。魚種ごとに刺すポイントは異なるようで、どこがツボなのかは事前に試しておく必要があります。

この方法ならば、呼吸器や循環器は機能しているので死後硬直は進行しません。動けないので、酸素消費が少なく、共食いもせず、身にストレスがかからないといった利点もあります。

 

日本の水産物の鮮度保持技術は様々あり、漁師、卸、料理人など現場で工夫を凝らしています。ときには各現場で秘密にされているものです。これを特許化して事業化している点が面白いと思います。

 

他業界でも現場のノウハウを改良して特許化することで、ユニークな事業を起こすことができるかもしれません。

【特許番号】

P3706879

【名称】

活魚の運動機能の抑制方法および抑制処理された活魚の保存方法

【特許権者】

卜部敏郎

【課題】

狭い空間で大量の活魚を運搬できるようにその運動機能を確実に抑制する方法と、運搬中における鮮度、品質を長時間維持した状態で運搬できる活魚の理想的な保存方法を提供する

【請求項】

活魚の脊髄の機能に損傷を与えることにより運動機能を低下させる活魚の運動機能の抑制方法であって、魚体の鰓蓋および/または側線により前記脊髄の位置を特定し、先端が尖った細い道具により、鰓蓋の内側から該道具の先端が前記脊髄に至るように魚体を刺突することで脊髄神経に機能障害を起こさせることを特徴とする活魚の運動機能の抑制方法。

*1:目立たないようにする方法も様々に考案されています