キリンビール 「のどごし生」メイラード反応生成物を加えて色と風味を出す
キリンビールの「のどごし生」の製法に関する特許です。
前回の記事で紹介したドラフトワンを皮きりに、各社から第三のビールが発売されました。
ビールがビールらしい色になるには、製造過程でメイラード反応という化学反応が関与しています。メイラード反応は糖とアミノ酸が関わる反応で多種多様な化合物を生じます。そのメイラード反応生成物は色だけでなく、味や香りなど食品の複雑な美味しさに寄与しています。
発明者は、糖とたんぱく分解物の混合物を加熱してメイラード反応を起こさせ、この反応生成物を発酵アルコール飲料に加えてビールらしい色と風味を付与しました。このような加熱してメイラード反応を起こさせた調味料は、リアクションフレーバーと呼ばれることがあり、ビール以外の様々な食品にも使用されています。
ドラフトワンではエンドウ豆たんぱくを加えて発酵することで、たんぱく分解物やそのメイラード反応生成物を生じさせています。のどごし生では、発酵によらない方法でたんぱく分解物とそのメイラード反応生成物を生じさせて添加しています。方法は異なりますが、どちらも同じ課題に取り組んでいるとみることができます。
この「ドラフトワン」「のどごし生」のような麦芽を使わないで発酵したお酒は「その他の醸造酒(発泡酒)」と分類されます。
第三のビールとしては他に「リキュール(発泡性)」という分類があります。これは麦芽を使った発泡酒を麦焼酎を加える、といった方法で造られています。麦芽を使うのでビールらしい風味が出しやすいようで、現在では「リキュール(発泡性)」が第三のビールの主流となっています。
この分野の技術の発展は、今後どのように酒税法が改正されるのか、に大きく左右されます。日本特有の酒税法が非関税障壁とみなせる、でも税収を確保は重要だ、などなど酒税をめぐる議論は、市場のニーズや科学の発展とは離れたところにあるのです。
【特許番号】
P3836117
【名称】
色度、風味に優れた発酵アルコール飲料、およびその製造方法
【特許権者】
麒麟麦酒株式会社
【課題】
ビール酵母を用いた発酵アルコール飲料、及びその製造方法において、ビール様の自然な色度や風味を付与した発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供すること、特に、制限された発酵原料の使用のために、発酵アルコール飲料の色度や風味の補強が必要な発泡酒やその他の雑酒において、ビール様の自然な色度や風味を付与した発酵アルコール飲料、及びその製造方法を提供する
【請求項】
ビール酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造方法において、糖とタンパク分解物とのメイラード反応物及びその調製物を用いて発酵アルコール飲料の液色及び風味を調整することを特徴とする発酵アルコール飲料の製造方法。