食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

花王【ヘルシアコーヒー(1)】 クロロゲン酸で肥満改善

花王からヘルシアコーヒーが発売されます。そこで、ヘルシアコーヒーに関わる特許を4回にわたって紹介します。この製品はコーヒーポリフェノールを高含有しており肥満改善に効果があるとして特定機能性食品(以下トクホ)に指定されています。

第1回は、コーヒーポリフェノールであるクロロゲン酸類を使用した肥満改善剤に関する特許です。

 クロロゲン酸の構造式

空腹時にモノを食べると、血糖値が跳ね上がってインシュリンが分泌されます。インシュリンが分泌されると糖が脂肪細胞に取り込まれ脂肪が作られます。これは肥満の原因の1つであり、血糖値の上昇を抑制できれば脂肪が付きにくくなります。例えば、雑穀などの低GI食品を普段の食事に取り入れることで肥満の改善になるとされています。

ですが、低GI食品は好みが分かれます。実際、私は雑穀の入ったご飯が好きじゃないです。やっぱ白飯がいいです。と、いったように低GI食品を食べる習慣を付けるのは困難です。

そこで手軽に摂取できる食後の血糖値の急上昇を抑えられる食品が望まれます。花王はコーヒーポリフェノールであるクロロゲン酸類にこの作用があることを見出し、特許化しました。コーヒーなら普段の生活に取り入れるのは容易で、しかもヘルシア緑茶と違って世界市場でも販売しやすくなります。

 

この特許のすごいところは特許範囲の広さです。特許範囲を広くする2つの仕掛けがなされています。 

1)クロロゲン酸というのは類似の構造を持つ多種の化合物からなる化合物群です。この特許ではその中の化合物を個別に指定しています。個別に化合物を指定することで特許範囲が広がっています。

例えば、コーヒー以外の食品のポリフェノールに血糖値上昇を抑える効果が見つかって健康機能食品にしようとしても、そのポリフェノールの中に花王の特許に含まれる化合物が1つでも含まれていれば特許侵害になる可能性があります。

 

2)請求項は血糖値上昇抑制剤とされています。肥満の原因までさかのぼって特許化しているので、肥満改善以外の用途も特許範囲に入っています。例えば、他社がコーヒーポリフェノールで「体脂肪が気になる方に」や「血糖値が高めの方に」といったトクホ製品を販売することも難しくなっています。

ネスレが「生豆茶」など世界的に コーヒーポリフェノールの機能性食品をすでに販売していますが、少なくとも日本では上述の健康効果を謳うことはできません。

このような強力な特許を取得するためには、研究に人材・資金・時間がかかります。それら経営資源を適切に運用するためには、綿密な特許戦略が練られていることが想像できます。

 

【特許番号】

P5054594

【名称】

脂質代謝改善剤

【特許権者】

花王株式会社

【課題】

一度に大量の摂取が可能で、日常的に摂取しても負担にならず、かつ安全性に優れ、より高い血糖値上昇抑制効果、高レプチン血症予防・改善効果、高インスリン血症予防・改善効果、脂質代謝改善効果を有する薬剤、食品等を提供する

【請求項】

3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸、5-カフェオイルキナ酸、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸、3-フェルロイルキナ酸、4-フェルロイルキナ酸、5-フェルロイルキナ酸及び3-フェルロイル-4-カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上のクロロゲン酸類からなる空腹時血糖値上昇抑制剤。