食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

高砂香料 穀物の酵素分解品でビール風味を付与する

ビール系飲料に使用する穀物の酵素分解品の製造方法に関する特許です。

ビール系飲料市場では、発泡酒、第3のビール、ノンアルコールなどが数多く販売されています。ビール系飲料は本来のビールとは原材料や製法が異なるので、ビールらしい風味をいかに付与するかが課題となります。

そこで、発明者は穀物をプロテアーゼで処理したエキスの製造方法を考案しています。このような酵素処理で風味を強める手法は、肉、乳製品、魚介、野菜、果物など様々な素材に対して行われており、特に新しい手法ではありません。

本文献では、プロテアーゼ処理する前に、穀物を加熱して穀物自体が持っている酵素(アミラーゼ、プロテアーゼなど)を失活させています。この工程が必要な理由には触れられていませんので、以下推測です。

内在性のアミラーゼが穀物の澱粉に作用すると低分子の糖が生じます。糖は甘味があるので、含まれていると不要な甘味が付いてしまいます。わざわざプロテアーセ処理してるぐらいなので、有用なのは蛋白質の分解物のはずです。低分子の糖と蛋白質の分解物を分離させるためには工程が複雑になります。ですので、糖が混入しないようあらかじめアミラーゼを失活させることが必要なのだと思われます。

 Salivary alpha-amylase 1SMD.png

特許を取得しても権利を侵害されたことを証明できなければ、発明を守ることはできません。本特許ではプロテアーゼ処理する前に内在酵素を失活させることが要件となっていますが、他社の類似製品が内在酵素の失活工程を経ていることを証明するのは難しいのではないでしょうか?ただし、競合他社がコンプライアンスに厳しい企業ならば、権利侵害を防ぐことはできます。このような特許に価値があるか、ないか、評価の分かれるところです。

 

【特許番号】

P5038663

【名称】

ビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法

【特許権者】

高砂香料工業株式会社

【課題】

ビール系飲料および焙煎飲料に添加することにより、ビール系飲料および焙煎飲料に望まれる濃厚感、旨味感を付与することが可能な風味付与剤の製造方法を提供する

【請求項】

以下の工程(1)~(3)を順次含むビール系飲料および焙煎飲料用風味付与剤の製造方法。

(1)穀物の摩砕物を加熱して、穀物の内在酵素を失活させる工程(2)工程(1)で加熱した摩砕物をプロテアーゼ処理する工程(3)エキス分を回収する工程