食品特許を読みあさろう

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岡山大学 加工食品に含まれるサツマイモの品種を判定する

加工食品に含まれるサツマイモのDNAから品種を判定する方法についての特許です。

サツマイモの花

農産物の品種改良は、行政、大学、企業など様々な機関で研究されています。優れた品種を作り出すと儲かるからです。品種改良には多大な資金と時間がかかります。ところが、創り出された品種を許可なく栽培するのは技術的に容易な場合が多いです。こうしたタダ乗りを許せば、優れた品種を生み出そうという動機は薄れてしまいます。コストばかりかかって儲からないからです。そのため、発明が特許制度によって守られるのと同様、品種も品種保護制度によって守られます。ところが、知的財産権の保護がゆるい国に品種が盗まれる、などの事例が発生しています。*1

Strawberries.JPG

そうした品種の盗用を判別する唯一の手段*2として、DNA判定があります。そのDNA判定にもいくつか方法があり、ケース毎に使い分けが必要です。

 

サツマイモは6倍体なので、品種判定で現在主流の方法*3だとうまくいきませんでした。また、サツマイモが加工されてしまうとDNAが断片化されるので、判定に使用する配列が長いとPCRで増幅できなくなります。そこで、発明者は多型を区別しない優性マーカーであり、増幅対象の配列が短くて済む マーカーを探しだした、というわけです。イチからちゃんと説明すると長くなるので、詳しく知りたい方は特許文献を読んでください。すいません。

  

ところで、品種を判別して盗用の証拠が得られたとして、盗用をやめさせたり、金を払わせたりすることはできるでしょうか?イチゴのようなケースもありますので、難しいのは、むしろ品種盗用の証拠が得られた後かもしれません。

 

【特許番号】

P5050189

【名称】

加工食品の原料品種判定方法

【特許権者】

国立大学法人 岡山大学

【課題】

①加工食品に含まれる劣化・断片化したDNAにも適用でき、かつ、加工食品の原料植物の品種を高精度に判定できる方法を提供する

②複数の品種の原料植物を含む加工食品においても、加工食品の原料植物の品種を高精度に判定できる方法を提供する

【請求項】

サツマイモを原料に含む加工食品に含まれる原料サツマイモの品種を判定する方法であって、サツマイモゲノムの品種に固有の特定部位にレトロトランスポゾンが挿入されているか否かを検出することによって原料サツマイモの品種を判定することを特徴とし、当該レトロトランスポゾンは、配列番号30に示される塩基配列からなるRtsp-1レトロトランスポゾンである原料サツマイモの品種判定方法。

*1:よく知られているのは韓国産のイチゴです。

*2:植物体として原型をとどめていれば、目視で判別可能な場合もあるかも知れません。その場合でもダメ押しとしてDNA判定をすることになると思われます。

*3:SSR(Simple Sequence Repeat) )と言われる共優性マーカーを利用する方法。DNA多型を利用した判別方法であり、倍数体だと同じ品種同士でも多数のパターンのPCR産物が増幅されてきます。情報量が多すぎて品種判定がしにくいのです。