食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

大塚食品 スゴイダイズのスゴイ技術

大塚食品の大豆飲料「スゴイダイズ」についての特許です。

スゴイダイズを初めて飲んだ時の驚きは今でも覚えています。

大豆の風味がやたら強く、粘性がドロッとして濃いからです。他の豆乳とは明らかに違います。

品質で明らかに差別化されたスゴイダイズは、イソフラボンブームに乗って大ヒットしました。

ですが、市場に類似商品はありません。真似できない技術によるものと推察されます。

では、どのような技術が使われているのでしょうか?

 

まず、スゴイダイズは「大豆飲料」であって「豆乳」ではないのです。

日本農林規格による豆乳の定義は次の通りです。

大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く。以下同じ。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(以下「大豆豆乳液」という。)であつて大豆固形分が8%以上のものをいう。

要するに、大豆の粉砕液(呉汁)からおからを取り除いたものが豆乳なのです。

 

特許文献によると、スゴイダイズは通常の豆乳と製法が全く異なります。

通常の豆乳の製造工程は次の通りです。

  1. 大豆に水を加えて浸漬する。
  2. 水の浸み込んだ大豆を粉砕して呉汁をつくる。
  3. 呉汁から繊維質(おから)を濾して取り除く。

 

これに対し、スゴイダイズの製造工程は次の通りです。

  1. 水に浸漬していない大豆を粉砕して、微粉末にする。
  2. 微粉末に水を加えて均質化する。

 

スゴイダイズはすごく細かく粉砕されたおからが入った呉汁、ということになります。

大豆を粉にして水に溶く、というと単純な発想にも思えますが、技術的には難しい部分を含んでいます。

プロピオンアルデヒド2p0m.gif

この特許のキモですが、粉砕する前の大豆を適度な温度の加熱水蒸気で処理しています。

加熱せずに大豆を粉砕すると、プロパナールという豆の青臭さの原因物質が生じて風味が悪くなります。

加熱することで、酵素リポキシゲナーゼを失活させてプロパナールが生じるのを防いでいるのです。

ただし、加熱が強すぎると大豆のたん白が変性しすぎてしまい、水溶性成分が不溶性に変化してしまいます。

そのため、適度な温度と時間に調整して大豆を加熱することが必要になります。

 

また、この特許には言及されていませんが、大豆を微粉砕するのにも高い製造技術が必要です。

大豆は油を多く含んでいるので、粉砕すると油がにじみ出てきて製造ラインがベタベタと付着します。さらに付着が進むと、安定的に粉砕することができなくなってしまいます。細かく粉砕すればするほど、油のしみ出しは増えます。細かく粉砕しないと飲料にしたときの舌触りが悪くなるので、細かく粉砕することは必須です。粉砕の速度を下げたり、頻繁にラインを止めて清掃するなどできればいいですが製造コストが上がってしまいます。

この特許を読むだけでも、大塚食品は他社が容易に真似できない高い製造技術をもっている、と推察できます。

 

【特許番号】

P3885194

【名称】

加工大豆粉末素材、大豆飲料および豆腐様食品

特許権者】

大塚食品株式会社

【課題】

大豆の栄養素を実質的に全て含有し、しかも、官能的に優れた食感を有し、美味しくて且つ消化、吸収性が優れた大豆飲料乃至豆腐製品(豆腐様食品)を、容易に製造する技術を提供する

 

【請求項】

①生大豆を加熱処理して得られ、水溶性窒素指数が55-70であり、リポキシゲナーゼ(LOX)値が20以下であり、n-ヘキサナールを含まないかまたは生大豆中に含まれる量を100%としたときの相対値で10%以下の量で含み、且つ10重量%の濃度となるように水に溶解させた液の糖度屈折率(ブリックス値)が3.0-6.0である加工大豆粉末素材を固形分濃度で10-25重量%含有し、均質化されていることを特徴とする大豆飲料。

 

②生大豆を95-105℃の温度下に水蒸気で120-210秒間熱処理後、微粉末化して得られる加工大豆粉末素材を固形分濃度で10-25重量%含有し均質化されていることを特徴とする大豆飲料。