食品特許を読みあさろう

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サントリー「特茶」(2) ケルセチン配糖体の減衰を抑える

サントリー「特茶」について前回に引き続き特許文献を紹介します。

前回は「特茶」に使用されているケルセチン配糖体について解説しました。今回はこのケルセチン配糖体の安定性に関する公開特許広報*1を紹介します。

 ケルセチン配糖体.png

ケルセチンやケルセチン配糖体は抗酸化能を持っています。言い換えれば、ケルセチンは酸化されやすいということです。他のものが酸化されないように、身代りに酸化される、といったイメージです。ケルセチン、いいヤツっぽいですね。

 

さて、ケルセチン配糖体が体脂肪の分解を促進させる働きがあるとのことですが、飲む前にケルセチン配糖体が酸化されて別の化合物になってしまっていては意味がありません。健康食品では、賞味期限内に必要量の健康機能成分が含まれることが担保できるか、ということがしばしば課題になります。特に飲料のような水分の多い形態では、健康機能成分しやすいというケースが非常に多いのです。例にもれず、特茶も同じ問題に行き当たったようです。ケルセチン配糖体は飲料として保存している間に徐々に酸化されてしまいます。

 

一般に、酸化されやすい成分を保護する為には酸化防止剤を使用します。酸化防止剤も自身が酸化されることで他が酸化されるのを防ぐものです。緑茶飲料の場合、酸化防止剤としてビタミンC(アスコルビン酸)が使用されます。ビタミンCを使用しないと、褐色に変色し、緑茶のフレッシュな香味が失われてしまいます。容器詰め緑茶飲料にビタミンCは必須と考えてよいでしょう。

ところが、発明者はビタミンCがケルセチン配糖体の分解を促進することを見出しました。これは面白い知見です。

そして、緑茶飲料として最低限必要なビタミンCの量と、ケルセチンの酸化促進の程度のバランスをとってビタミンC濃度100~400ppmという範囲を設定したようです。

 

ビタミンCも相手によっては"酸化促進剤"になってしまう、というのは覚えておきたい事例です。文献では、ビタミンCが酸化する際に生じるフリーラジカルがケルセチンの酸化に影響するのでは?と推測していました。

サントリーは「特茶」と同時に「大人ダカラ」という商品について特定保健用食品を申請し、両方ともトクホ表示の認可が出ています。「大人ダカラ」は既存商品の「ダカラ」にケルセチン配糖体を配合した商品だと思われますが、まだ発売されていません。今後の展開に注目です。

トクホ飲料市場で花王ヘルシアなど競合との対決のゆくえも見ものです。

 

ところで、いちサラリーマンとしての本業の都合で、2014春ごろまでこのブログの更新を停止します。ご承知ください。

【特許番号】

特開2012-183063

【名称】

ケルセチン配糖体配合容器詰め飲料

【特許権者】

サントリーホールディングス株式会社

【課題】

長期間保存してもケルセチン配糖体の安定性が良好である、ケルセチン配糖体配合容器詰め飲料を提供する

【請求項】

  1. ケルセチン配糖体が配合されており;pHが、pH5.6~6.4であり;アスコルビン酸を100~400ppm含む、容器詰め飲料。
  2.  pHが、pH5.6~6.0である、請求項1に記載の飲料。
  3. アスコルビン酸量が200~300ppmである、請求項1又は2に記載の飲料。
  4. ケルセチン配合量が、100~500ppmである、請求項1~3のいずれか1項記載の飲料。
  5. 緑茶飲料、紅茶飲料、又は烏龍茶飲料である、請求項1~4のいずれか1項記載の飲料。
  6. 緑茶飲料である、請求項5に記載の飲料。
  7. pHを、pH5.6~6.4とし;アスコルビン酸を100~400ppm配合することを含む、ケルセチン配糖体の飲料における安定化方法。
  8. pHを、pH5.6~6.4とし;アスコルビン酸を100~400ppm配合することを含む、ケルセチン配糖体が配合されている、茶飲料の安定化方法。

*1:公開広報は特許の審査前に出願内容を公開するものです。特許は未だ成立してません。