食品特許を読みあさろう

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ホクト きのこの包装フィルムの秘密

ホクトのぶなしめじの包装袋についての特許を紹介します。きのこの鮮度を長期間保持できるすごい樹脂フィルムです。

市販のキノコのほとんどは、樹脂フィルムで"密閉"されたパックで販売されています。ここで注意したいのは、樹脂フィルムはわずかながら気体を透過するということです。身近な所だと、災害用に保管したペットボトル、数年たったボトルの水面を調べてみてください。新品と比べて水面が下がってないでしょうか?PET樹脂は水蒸気をわずかに通すので、ボトル内の水が外部へ蒸発しているのです。あれだけ分厚い樹脂ですら、水蒸気を通すのです。

そのため、食品の包装は気体の透過性を考慮して設計されています。多くの食品のフィルムの裏が銀色なのは、酸素や水蒸気(または光)の透過性を低くするためアルミと樹脂と併用しているためです。

さて、きのこの包装を設計する場合、どのような気体の透過性を考えればいいのでしょうか?

きのこは生きているので、呼吸をしています。そのため、酸素がなくなり二酸化炭素が増えると、もっぱら嫌気呼吸が行われます。すると、アルコールが発生し、パックきのこ特有のムレ臭さが生じます。この状態で保存すれば、パックきのこの独特臭さがどんどん増して不味くなるのです。

そこで、従来から酸素をパック内に供給するため、酸素透過性が高いフィルムを使用したり、パックに穴をあけたりしてきました。

 

しかし、きのこは生きています。酸素が供給されれば成長します。ただ伸びてくれるだけならいいのですが、きのこは菌糸を伸ばして、細い綿毛状になります。これはカビの菌糸と見分けがつきません。きのこ自体は元気に生きているのですが、消費者にとっては「カビが生えた!」ってなるわけです。

そこで発明者は、酸素を適度に供給しつつ、菌糸を成長させない方法を検討しました。その結果、きのこの嫌気呼吸によって生じるアルコールが菌糸の成長を抑制することがわかったそうです。そして、酸素透過性の高いフィルムを採用し、フィルム微細な穴をあける方法を見出しました。この方法により、きのこに酸素を多すぎない程度に供給しつつ、嫌気呼吸により生じたアルコールを微細な穴から逃がします。きのこから生じるアルコールと穴から逃げるアルコールの量が釣り合わせてバランスをとります。すると、パック内に菌糸が成長しない程度で、かつアルコール臭さが弱い、絶妙な気中アルコール濃度を保つことができるのです。

生鮮食品の包装フィルムがここまで工夫されている、という話を知ったのは初めてです。とても驚きました。安価に実現できる見事な技術です。包装にまで工夫を凝らす技術の広さが、きのこ業界でのホクトの快進撃の理由の一つだと言えるのではないでしょうか?

 

【特許番号】

P4211017

【名称】

シメジ類キノコ包装体

【特許権者】

ホクト株式会社

【課題】

トレイを使用しない加熱シール袋による包装(ピロー包装)に際し、簡単な方法でより長期間にわたって鮮度が保持できるシメジ類キノコ包装体の提供

【請求項】

ブナシメジ等のシメジ類を合成樹脂フィルム製袋内に封入してなるシメジ類キノコ包装体において、

 前記合成樹脂フィルムとして酸素透過度が800cc/m2・24h・atm以下の材料を使用し、袋表面積に対する面積比率が1.53×10-5~4.60×10-5%となるように、直径が約100μの微細孔を1~3個開けて袋内外に微量の通気性を持たせることにより、該袋内のキノコの嫌気呼吸によって発生するアルコール濃度が0.002%~0.010%で平衡状態となるようにしたことを特徴としてなるシメジ類キノコ包装体。