食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

丸大 ウナギの蒲焼きそっくりの「鶏肉の蒲焼き」の造り方

ウナギのかば焼きの見た目に似せた「鶏肉の蒲焼き」のつくり方についての特許です。

 丸大食品「鶏肉の蒲焼き」

昨今、日本近海のシラスウナギ(ウナギの稚魚)の漁獲量が減り、ウナギの値段が高騰しています。ウナギの養殖は天然のシラスウナギに餌をやって成魚に育てるものなので、シラスウナギが獲れないというのは業界にとって大きな打撃です。さらに、現在の資源管理が続く限りシラスウナギの資源量回復の見込みはなく、今後もウナギの価格高騰は不可避です。海外産ウナギの輸入が脚光を浴びてますが、ニホンウナギ、ヨーロッパウナギと同様に、いずれ資源を枯渇させるかもしれません。

参考:ウナギをどう看取るか?

 

そんな中、丸大食品から「鶏肉の蒲焼き」が発売されました。これは鶏のミンチを成形して、ウナギの蒲焼きそっくりの見た目や食感を再現した食品です。発明者はウナギそっくりの「鶏肉の蒲焼き」を効率よく製造する方法を見出しました。

具体的な造り方は、次の通りです。

  1. 鶏のミンチに調味料を加えて調味する。
  2. 調味されたミンチをパイプで送りながらジュール加熱*1し、肉が固まらない程度の温度に予備加熱する。
  3. 予備加熱された肉にマイクロ波加熱*2し、表面のみタンパク質を変性させて円筒状に固める。
  4. 円筒状の肉を切り開いてウナギなど任意の魚の切り身状に成形する。
  5. 成形された肉にマイクロ波加熱して、肉全体を固化させる。

 

この商品がウナギ高騰の救世主になるかはわかりませんが、なかなか売れているようです。来年の夏までに他社からも同様の製品が販売されることでしょう。「ウナギそっくり食品」がどこまで消費者に受け入れられるのか、注目したいと思います。

 

【特許番号】

P5072909

【名称】

食肉類加工品の製造方法及び製造装置

【特許権者】

丸大食品株式会社

【課題】

特許第3709479号の食肉類加工原料の成形方法により得られる成形された原料食肉類に対して、更に成形加工を行う工程が追加されたことを特徴とする食肉類加工品の製造方法、及び食肉類加工品の製造装置を提供する

【請求項】

①以下の(A)~(D)工程を含む食肉類加工品の製造方法

(A) 略円筒状の搬送管に原料食肉類を圧送しつつ、ジュール加熱により該原料食肉類をタンパク質変性温度以下の温度まで予備加熱する工程、

(B) マイクロ波加熱によって上記予備加熱された原料食肉類の表面側に保形性を付与する程度にタンパク質変性層を形成する工程、

(C) B工程で得られた保形性が付与された原料食肉類の長手方向に切り込みを入れる工程、

(D) C工程で得られた原料食肉類をマイクロ波加熱によって全体的に加熱固化する工程。

 

②食肉類加工品の製造装置であって、

原料食肉類を成形する略円筒状の搬送管と、

上記原料食肉類を搬送管内を連続的に圧送する圧送手段と、

電気絶縁性の上記搬送管に取り付けられ、上記原料食肉類への通電に基づくジュール熱によって、連続圧送下に通過する原料食肉類を予備加熱するジュール加熱手段と、

上記搬送管を覆うハウジングに取り付けられ、上記搬送管内を連続圧送される予備加熱された原料食肉類の表面側にマイクロ波加熱によって保形性付与に必要な程度にタンパク質変性層を形成するマイクロ波加熱手段と、

保形性が付与された原料食肉類の長手方向に切り込みを入れる手段と、

切り込みを入れられた原料食肉類をマイクロ波加熱によって全体的に加熱固化するマイクロ波加熱手段とを備えたことを特徴とする食肉類加工品の製造装置。

*1:ジュール加熱とは:素材に電流を流して素材自体から発熱させる加熱方法です。効率、精度よく加熱できます。蒸気などを使うよりも工場内の気温が上がらないので、作業環境の面からも嬉しい。

*2:マイクロ波加熱とは:電子レンジと同じ加熱方式です。