マルハニチロ 抗真菌作用のあるプロタミン酵素分解ペプチド
白子から抽出したプロタミン由来の抗真菌ペプチドについての特許です。
プロタミンは精巣に多く含まれるタンパク質で、精子に濃縮されたDNAの安定化に寄与しているとされています。菌の増殖を抑える作用を持つことが知られており、食品の日持ちを向上させるための保存料として使用されます。保存料としては、主に次の2つの長所があります。
①中~塩基性で効果を発揮するので酸による静菌ができない場合に使用できる。
②天然物由来なので合成保存料が使用できない商品に使用できる。
具体的には、和菓子、パン類、麺類などです。
プロタミンは一般にサケの白子から抽出されます。サケは卵(イクラ)をとるために大量に漁獲されますが、オスも大量に混獲されます。産卵期のサケの身や白子にはあまり商品価値がありません。そのため、サケの白子は安価に大量に入手可能です。マルハニチロはサケ加工の大手であり、白子の商品価値を高めることで利益を得ることができます。
発明者は、プロタミンを酵素分解すると、真菌(カビ・酵母)にも高い抗菌活性を示すことに着目しました。プロタミンの酵素分解物から真菌に対する抗菌活性を発揮するために必要なアミノ酸配列を解明して特許化したのです。
マルハニチロでは、プロタミン酵素分解物を食品用だけでなく医薬品用素材としても販売しているようです。また、プロタミンのリパーゼ阻害による抗肥満作用にも注目しているようです(特許第4889782号)。自社の得意な水産物を研究して商品価値を高める、という戦略がうかがえます。
【特許番号】
P4520477
【名称】
抗真菌ペプチドまたはそれを含有するペプチド組成物とその製造方法
【特許権者】
株式会社マルハニチロ食品
【課題】
真菌に対して抗真菌活性を示すペプチド又はペプチド組成物、及びそれらを含む食品、医薬品、医薬部外品、化粧品を提供することであり、抗真菌活性を示すペプチドの製造法を提供すること。
【請求項】
1)配列番号:1のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
2)配列番号:2のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
3)配列番号:5のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
4)配列番号:6のアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩。
5)配列番号:1~6:のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド及びその塩からなる群から選択されたペプチド化合物の少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする抗真菌剤。
6)配列番号:1~6:のアミノ酸配列からなるペプチド及びその塩からなる群から選択されたペプチド化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする食品、医薬品又は医薬部外品、化粧品
配列番号:1 Ile Arg Arg Arg Arg Pro Arg Arg
配列番号:2 Ser Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Gly Arg Arg Arg Arg
配列番号:3 Val Ser Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Gly Arg Arg Arg Arg
配列番号:4 Arg Arg Arg Arg Arg Arg Gly Gly Arg Arg Arg Arg
配列番号:5 Arg Arg Arg Arg Arg Gly Gly Arg Arg Arg Arg
配列番号:6 Arg Arg Arg Arg Gly Gly Arg Arg Arg Arg