食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

プリマハム 輸入牛の風味を和牛の風味に変える

グラスフェッド牛肉にラクトン類を付与して国産牛のような風味に変える方法についての特許です。

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「輸入牛よりも国産牛の方が美味しい」としばしば言われます。特に一部の輸入牛のにおいが苦手な人が多いようです。それはグラス臭と呼ばれ、飼料として主に草を与えた(グラスフェッド)牛が持つにおいです。国産牛は主にトウモロコシなどの穀物を与えられる(グレインフェッド)ため、グラス臭はほとんどありません。近年では日本への輸出向けに、グレインフェッドの輸入牛肉もかなり多くなり、輸入牛と国産牛の差がなくなってきた、とも言われます。

日本ではグレインフェッドが主流ですが、世界ではグラスフェッドが主流です。食肉加工業者が安価で供給の安定した牛肉を使おうとすると、必然、グラスフェッド牛肉を使用することとなります。特にBSE問題で、アメリカ産牛肉の輸入制限をしたことで、グレインフェッド牛肉の供給が厳しくなりました。アメリカでは日本への輸出向けにグレインフェッド牛を生産していたからです。食肉加工業者にとって、いかにグラスフェッド牛を万人向けに美味しく食べられるようにするかが重要です。

発明者は、グラスフェッド牛肉にラクトン類を付与する方法を考案しました。ラクトン類は桃やココナッツ、加熱した乳に含まれる香気成分です。食品用香料や、香水などのフレグランスにも広く使用されています。近年の研究で、松坂牛などの高級和牛には、グラスフェッド牛の数倍のラクトン類が含まれることがわかっています。ラクトン類が和牛特有の甘い脂の香りに寄与しているです。

特許文献によれば、グラスフェッド牛肉にココナッツミルクや桃ピューレを浸透させることで、和牛風味のステーキ肉に変えることができるそうです。

 

グラスフェッド牛肉にラクトンを浸み込ませると特許侵害になりますが、付け合わせやソースにココナッツや桃などのラクトンを含有するものを使用するだけならこの特許は回避できます。レストランなど飲食店にとっても、有用な知見かもしれません。

  

【特許番号】

P4704300

【名称】

香味の改質されたグラスフェッド牛肉の製造方法

【特許権者】

プリマハム株式会社

【課題】

グラスフェッド牛肉に特有なグラス臭が矯臭され、旨味が向上したグラスフェッド牛肉とする、グラス臭が改善された牛肉又は加工牛肉製品の製造方法を提供する

【請求項】

グラスフェッド牛肉に、ラクトン類及び/又はココナッツミルク、モモピューレ及び練乳から選ばれるラクトン類含有物質を、ラクトン類換算で0.1~100ppmとなるように添加し、肉中にラクトン類を均一に分散させることを特徴とするグラス臭が改善されたハンバーグ、サイコロステーキ又はステーキ用加工肉の製造方法