食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

サッポロビール 「ドラフトワン」エンドウマメでビール風味を造る

第三のビール市場を切り拓いた商品ドラフトワンについての特許です。

 

第三のビールが生まれたいきさつについては、リンク先にある通りだと思います。

税法との闘い その1 – 歪んだ酒税法

酒税法との闘い その2 – 国税庁とのいたちごっこ

酒税法ゆえに、ビールメーカーは日本でしか通用しない技術を競わざるをえないわけです。その善し悪しについて言いたいことはありますが、趣旨から外れるので置いておきましょう。

 

酒税を回避し売価を下げるため、第三のビールが開発されました。その第一号がサッポロビールの「ドラフトワン」です。ドラフトワン麦芽を全く使わないビール風のお酒です。

お酒は澱粉、糖を発酵させてアルコールにすることでできます。ですので、コーンスターチなどの澱粉がビールの副原料として使用されています。

しかし、当然ながらアルコールがあればビールになるわけではありません。ビールの美味しさには麦芽に含まれるたんぱく質が深く関与しています。原料に含まれるたんぱく質が分解されて、味や香り、色、などさまざまな効果を持った成分が生じます。麦芽を使わずにビール風味を出そうと考えるなら、代わりに何らかのたんぱく質が必要になります。

 

発明者は、エンドウマメのたんぱく質を使用しました。エンドウマメにたどりつき、エンドウマメを使いこなすまでに様々な試行錯誤があったもの推測できます。特許文献の中では大豆たんぱくを使用した場合との比較が記載されています。エンドウマメたんぱくを使用する方が、ビールらしい風味があって、泡立ちがいいそうです。

エンドウマメは大麦よりも高価です。安価な原料の美味しさを高価な原料で再現しようしてるわけです。しかも、たくさんの試行錯誤と高い技術が必要です。にも関わらず、「本物のビールの方が美味しい」などと言われてしまうのです。そういった開発に携わる方々の想いを想像すると、尊敬せずにはいられません。

 

こうしてドラフトワンを皮きりに、大手各社から第三のビールが発売されていきます。次回はキリンのどごし生の特許について取り上げます。

【特許番号】

P3822893

【名称】

発泡アルコール飲料及びその製造方法

【特許権者】

サッポロビール株式会社

【課題】

発泡アルコール飲料において、泡立ち、泡持ちの向上に有効な原材料及び添加物並びに当該原材料及び添加物の発泡アルコール飲料製造工程における利用方法を提供する。

【請求項】

発酵前液を発酵させて製造する発泡アルコール飲料の製造方法において、前記発酵前液にエンドウ豆から抽出して得たエンドウタンパクを添加することを特徴とする発泡アルコール飲料の製造方法。