食品特許を読みあさろう

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カゴメ 風味を損ねずにトマトジュースを濃縮する

トマトジュースの風味を損ねずに濃縮する、逆浸透圧濃縮法についての特許です。

トマトジュースは、一般にトマトの収穫時期に1年分が製造されて濃縮して保存されます。果実そのものでは保存できないので、加工して保存するわけです。その際には濃縮しておくと保管や輸送に有利です。

濃縮する方法には、加熱や減圧により水分を蒸発させて濃縮させる方法があります。しかし、加熱による風味が変化する、水分とともに揮発性の香気成分が失われる、といった理由で風味低下を免れません。

また、風味低下しにくい方法として、凍結濃縮法があります。この方法は水溶液が凝固する際に、純粋な水が最初に凍り始めるという原理を利用したものです。最初に凍り始めた純粋な水を除去することで水溶液を濃縮できます。しかし、装置が複雑で処理量が小さいという欠点があります。

 

そこで、逆浸透濃縮という方法が採用されています。逆浸透濃縮は、加圧下で水溶液を半透膜に接触させることで水分子のみ膜を通過させて濃縮する方法です。トマトジュースをパイプに流し、その途中に管状の膜モジュールが接続されている、という連続的な工程で濃縮されます。

逆浸透濃縮では、理想的には浸透圧以上の圧力をかければ脱水できます。しかし、実際には膜付近で濃度分極という現象が起こり、圧力を高くしても脱水が進まなくなります。それでも脱水を進めようとさらに圧力をかければ、製造装置にかかる負荷が大きくなってしまいます。

そこで、加える圧力、パイプを通るジュースの流速、膜の長さなどを効率よく高濃縮できるようなバランスに調整する必要があります。

発明者は、ちょうどよいバランスを見出し、トマト果汁を4倍濃縮できるようにしました。カゴメ社によれば、4倍濃縮というのは、トマトジュースの逆浸透濃縮では世界最高の水準とのことです。製造技術は現場での試行錯誤が重要で、現場力の高さがうかがい知れます。

 

安価で美味しいトマトジュースを一年中飲むことができるのは、高い製造技術のおかげです。そういうことを想いながらジュースを飲むと格別です。技術者ならではの楽しみ方と言えます。

 

【特許番号】

P4582838

【名称】

トマトジュースの逆浸透濃縮方法

【特許権者】

カゴメ株式会社

【課題】

トマトジュースの一段一過式による逆浸透濃縮方法において、逆浸透濃縮装置に無理な負荷をかけることなく、高濃縮品を安定製造する

【請求項】

トマトジュースを、複数の管状膜モジュールを直列に接続した一段の濃縮ユニットへ高圧下で一過式に流下させ、逆浸透濃縮する方法において、トマトジュースを、圧力損失30kg/cm2以下で、下記の式1を満足するX及びYの条件下に、但しXは33以上の条件下で、食塩阻止率99%以上の管状膜モジュールを接続した濃縮ユニットへ流下させ、Brix20%以上に逆浸透濃縮することを特徴とするトマトジュースの逆浸透濃縮方法。