【おいしい牛乳(2)】森永のおいしい牛乳 特許にみるライバル意識
森永のおいしい牛乳の製法についての特許です。
明治と森永は競合商品が多いライバル関係にあります。単に「シェア争いをしている」というだけではなく、社員1人1人が「あいつらには負けたくない!」と互いに闘志を燃やす関係です。
2000年以前、飲用牛乳市場は雪印が1強として君臨し、2位の座を明治と森永で競いあっていました。「王者・雪印には敵わないから、せめてあいつらには勝ちたい」と熱いライバル関係を育んできたのです。ところが、2000年に雪印集団食中毒事件が起き、雪印は解体されました。
市場には大きな無人の野が広がり、明治と森永はここぞとばかりに攻勢をかけ共にシェアを大きく伸ばしました。そして明治、森永、メグミルク(旧雪印)の三国時代が訪れました。
それもつかの間、2002年に業界に衝撃を与える大ヒット商品が登場しました。「明治おいしい牛乳」です。この商品は発売以来10年間、トップシェアを獲得し続けています。これにより明治は三国時代を制し、明治1強、以下群雄割拠の時代が訪れて今に至ります。
ライバル森永は「明治おいしい牛乳」の対抗商品を2003年に発売しました。その名も「森永のおいしい牛乳」です。このネーミングをパクリと言う意見もありますが、私は強いライバル心の表れだと思います。先を越されたが、同じ土俵で勝負すれば負けない、という自負心を感じます。
特許文献からも対抗意識が感じられます。森永は特許の中で、明治の方法は『飲用時における風味の向上を十分に図ることはできず』などと述べています。そして森永の方法の方が優れていることが強調されています。具体的な方法は、殺菌した後の牛乳を窒素を満たしたタンクに保管して酸素を追い出す、というものです。これを酸素バリア性の高い牛乳パックに、酸素が入らないように充填しているようです。窒素ガスで酸素を追い出す、という方法は明治と同じですが、明治の特許をうまく回避しています。
実際、2つの「おいしい牛乳」を飲み比べると味が違います。どちらが美味しいかは、個人の好み次第でしょう。
市場では明治が勝利しました。「明治おいしい牛乳」がシェア8%で1位なのに対し、「森永のおいしい牛乳」はシェア2%で3位、大きく差が付いています。
(ちなみに2位は雪印の「メグミルク」です。)
今後、逆転はないのでしょうか?いや十分にあり得ます。
1位の明治とて、かつての雪印のような絶対的な支配力はありません。その雪印でさえ2000年に転落したのですから。
加えて、少子高齢化やいわゆる"牛乳ばなれ"によって飲用牛乳市場は縮小し続けています。今後どのような勢力争いが行われるのか、興味深いところです。
【特許番号】
P3490427
【名称】
牛乳類の製造方法および製造装置
【特許権者】
森永乳業株式会社
【課題】
加熱殺菌工程を経て得られる牛乳類の風味を効果的に向上できる方法および装置を提供する
【請求項】
原料乳を加熱殺菌処理する工程と、加熱殺菌された牛乳類を、不活性ガスで置換された無菌タンク内に貯留する工程と、前記無菌タンク内に貯留された牛乳類を包装容器に充填する工程を有することを特徴とする牛乳類の製造方法。