食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

味の素 酸素を通しにくいマヨネーズボトル

 酸素を通しにくいマヨネーズボトル「フレッシュキープボトル」についての特許です。

←コレのボトルの特許です。

食品は保存中に風味が変化していきます。その主たる要因の1つは酸素です。マヨネーズのような油脂の多い食品は、酸素の影響を受けやすく、特有の油脂劣化臭が生じます。そのため、保存容器には酸素を透過しにくい素材が選ばれます。酸素バリア性を持たせる素材として一般的なのは、アルミニウム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(通称EVOH、エバール)*1です。マヨネーズボトルのようなブロー成型で造られる容器には、樹脂であるEVOHが使われます。

EVOHは酸素バリア性の高い樹脂ですが他の樹脂に比べて、価格が高いこと、水に弱い、といったデメリットもあります。そのため、安価で加工しやすいポリエステルなどと層状に組合わせて使用されます。ところが、EVOHはポリエステルと接着しにくいため、各層がはがれてしまう場合があります。そこで、EVOHに他の樹脂*2を混ぜて接着性を高めたものが、従来のマヨネーズボトルに使用されていました。

発明者は、ポリエステルとEVOHの間にどちらにも接着しやすい樹脂層を挟みました。さらに層厚を調整することで、従来よりも酸素バリア性の高いボトルを完成させました。味の素社ホームページによると「フレッシュキープボトル」だそうです。

このような包材の改良を自社で行うことができる加工食品メーカーは一部の大手*3に限られています。多くの加工食品メーカーは包材メーカーに開発を頼ることになります。例えば、包材メーカーが素晴らしいマヨネーズボトルを発明したとして、独占供給するならシェアトップ*4のキューピー社にしたいと考えるはずです。下位の食品メーカーにとって、包材メーカーに任せていては包材で差別化することが困難になります。シェア2位の味の素社は「自社で包材開発ができる」という強みを生かしてマヨネーズ市場で戦っているようです。

←ちなみにシェア3位はケンコーマヨネーズで8%ぐらいです。

【特許番号】

P5025046

【名称】

ボトル入りマヨネーズ様食品

【特許権者】

味の素株式会社、クノール食品株式会社

【課題】

マヨネーズ様食品の酸化による経時劣化を防止し良好な風味を長く維持することのできるボトル入りマヨネーズ様食品を提供する

【請求項】

ブロー成形されたボトル入りマヨネーズ様食品であって、該ボトルが少なくとも主要樹脂層/接着樹脂層/酸素バリア性樹脂層/接着樹脂層/主要樹脂層の順で構成される可撓性多層樹脂ボトルであり、

かつ、主要樹脂層2層の合計量が上記マヨネーズ様食品100gあたり2.0g乃至4.5gであって、ポリエチレンよりなり、酸素バリア性樹脂層が上記マヨネーズ様食品100gあたり0.07g乃至0.35gであって、エチレン-ビニルアルコール共重合体よりなり、

該エチレン-ビニルアルコール共重合体がビニルアルコール残基比55%乃至75%であり、そして、該主要樹脂層の合計厚みは最も薄い部分で200μm乃至350μm、該酸素バリア性樹脂層の厚みはもっとも薄い部分で8μm乃至20μmであり、

接着樹脂層が下掲(1)乃至(6)の樹脂のいずれかで構成され、

 (1)マレイン酸-ポリエチレン共重合体: (2)無水マレイン酸-ポリエチレン共重合体: (3)エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体: (4)(3)の共重合体の金属塩: (5)エチレン-酢酸ビニル共重合体:および (6)ビニルアルコール残基比が25%以下であるエチレン-ビニルアルコール共重合体、ならびに、ボトルの開口部を封止したときの酸素透過度が、温度24℃、ボトル内相対湿度95%、ボトル外相対湿度76%及びボトル内外の酸素分圧差が一気圧の条件で、ボトル内のマヨネーズ様食品100g当たり0.025ml/日以下であることを特徴とするボトルの開口部が封止されたボトル入りマヨネーズ様食品。

 

*1:商品名:エバール(クラレ)、ソアノール(日本合成化学工業)、どちらも食品開発、製造の現場ではエバールと呼ばれることが普通です

*2:エチレン-アクリル酸共重合体の金属塩、エチレン-酢酸ビニル共重合体など。EVOHと混ざりやすく、ポリエチレンと接着しやすい樹脂。

*3:多分ですが、国内では10社未満なんじゃないかと思われます。

*4:家庭用マヨネーズ市場では、キューピー社が約75%で1位、味の素社が約15%で2位のシェアを占めています。