食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

ゴキブリがどこで混入したかを推定する技術

ペヤングのニュースがテレビやインターネットを騒がせています。とうとう商品の全回収、生産停止、という事態に至りました。食品業界において後世まで残る大きな事例となることでしょう。

ペヤング関連の報道のなかで、まるか食品はゴキブリが混入した商品を回収して外部検査機関で検査したとあります。混入時期の推定を行ったとのことです。
では、一体どのような検査をすると昆虫の混入時期を推定することができるのでしょうか?そこで、昆虫異物関連の特許文献を紹介します。

昆虫の混入時期の推定方法は?

昆虫異物の混入時期推定の方法は、特許文献では次の3つの方法に分けられます。
1)酵素活性の変化

例(特開2003-169698):加熱により昆虫のカタラーゼが失活する。酵素活性の有無で加熱の有無を推定できる。
⇒ゴキブリが加熱されていればカタラーゼが失活している。混入時期が麺のフライ工程を以前か以後かを判定できる。

例(特開平10-253611):未加熱の昆虫ではアセチルコリンエステラーゼが経過日数で活性が徐々に低下していく。酵素活性の程度を測定すれば死後経過時間が推定できる。
⇒ゴキブリがフライ工程後に混入していればコリンエステラーゼ活性が残っている。この酵素活性が製造日からの経過日数から推定される程度であれば、フライ工程後の製造工程で混入した可能性が高い。酵素化性が高すぎれば、開封後に混入した可能性が高い。

2)昆虫構成成分の残存量の変化を測定する

例(特許第4194089):炭酸飲料のような加圧食品中で、加圧されることで昆虫の構成成分(色素など)が体内から溶出する。構成成分の体内残存量から加圧の有無を推定できる。
⇒加圧の有無で判定する方法なので、カップ焼きそばの異物では混入時期を判定できない。

3)食品成分の昆虫体内への浸透を測定する

例(特許第4267987):食品成分が昆虫体内にどの程度浸透するかは熱履歴、経過時間によって異なる。食品成分の浸透程度を測定することで加熱の有無または未加熱でも混入からの経過時間を推定できる。
⇒麺と共にフライされていれば昆虫内に揚げ油が浸透している。混入時期が麺のフライ工程を以前か以後かを判定できる。また、開封後に麺とは別に油揚げしたゴキブリが混入したとしても油の種類やその浸透度合いの違いでフライ工程での混入か否かを判定できる。 

上に挙げた以外にも混入時期の推定方法はあるかと思います。
ともかく、ペヤングのゴキブリは何らかの推定方法によって、加熱の有無または死後経過日数が判別されたのでしょう。
混入した写真のゴキブリは麺と絡まっていたので、おそらく油揚げで加熱されたのでしょう。それが外部機関の検査ではっきりしたのだと推測します。だからこそ回収や製造停止という措置に踏み切ったのではないでしょうか?

上記のような異物混入時期の判定方法は、各メーカーによってさまざま開発されています。昆虫に限らず、プラスチックや毛髪などなどそれぞれにあわせた判定方法があるのです。いつ異物が混入したかを分析によって知ることで、混入の原因を究明し再発防止につなげることができます。各社に進捗の差はあるでしょうけれど、これからも地道にやってくしかないですね。