食品特許を読みあさろう

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日立造船 デジタル技術の進化は、ちりめんじゃこからフグを取り除く

日立造船による画像処理技術を駆使した異物選別機についての特許です。

先日、大分県のスーパーで販売されていた豆アジに毒のあるクサフグが混入していたとしてニュースになりました。その後、横浜市のスーパーでも同様に豆アジに有毒のシロサバフグの混入する問題が発生しました。
このような混入はなぜ起こるのでしょうか?

農産物、水産物のような天産物は収穫時点では様々な異物が混入しています。
例えば、アジを漁獲したからといってアジだけが網に入っているわけではなく様々な種類の魚介類、海藻、石などが混入しています。ですので、消費者に届く前に漁港、卸、小売など流通の過程で選別が行われ異物が取り除かれているのです。

また、当然のことですが選別にはコストがかかります。
豆アジのように小さい魚は大きな魚より選別の手間=コストがかかります。しかし、雑魚であり高い値段では売れません。そうすると選別の精度を上げるのは難しく、稀にアジ以外の魚が混ざることは十分考えられます。これが豆アジにフグが混入した状態で販売された理由だと考えられます。

 

では、豆アジよりもさらに選別が難しい魚ではどうなるのでしょうか?
昔から認識されていた問題なのですが、イワシの稚魚(ちりめんじゃこ、しらす)にフグの稚魚が混ざる、ということがあります。
シラスに混入したフグを完全に除去するのは現実的なコストで至難の業です。人間の手作業では不可能と言えるかもしれません。

 

しかし、先日、ちりめんじゃこに混入したフグをほぼ100%取り除く装置を日立造船が発売する、という発表がありました。そこでどのような方法で選別を行っているのか、特許文献を確認してみました。

行っているのは光学選別(画像選別)という方法です。
ちりめんじゃこをコンベア状に薄く広げてカメラで検出し、大きさ、形状、色彩といった画像データを抽出します。そしてあらかじめ設定した基準から外れたものに圧縮空気を吹き付けるなどの方法でラインアウトさせます。
この方法は、画像処理の速度と精度がカギになると考えられます。ということは食品企業が自社開発するのは困難であり、日立の高い技術力が活かされていると推測します。

最近のちりめんじゃこには、イワシ以外の"混ざりもの"が少なくなっています。その理由は、光学選別技術の発展だと言えます。フグの稚魚を取り除く技術もその延長線上にあります。デジタル画像処理技術の発展は、ちりめんじゃこにまで影響を及ぼしているわけです。ちりめんじゃこを食べるときには、科学の進歩に思いを巡らせたいと思う次第です。

【特許番号】
P5455409
【名称】
異物選別方法および異物選別設備
特許権者】
日立造船株式会社
【課題】
ほぼ同一形状で被選別物の種類が2つである場合にはより確実に選別することができるが、例えば干した小魚と、この小魚に混入している貝殻、木片、プラスチック片などのように、形状が不揃いで且つ色が異なるものを、より確実に選別するのが難しいという問題がある。
本発明は、形状が不揃いで且つ色が異なるもの同士を、より確実に、選別し得る食品における異物選別方法および異物選別設備を提供することを目的とする。
【請求項1】
搬送経路上を搬送される選別対象物体に含まれている異物を選別する方法であって、
搬送経路を撮影し得るカメラ装置で撮影された画像データから色彩情報に基づき物体を抽出し、
この抽出された物体の画像データにおける少なくとも面積・長さなどの大きさを表わす計量的特徴量に基づき物体が異物であるか否かを判断し、
異物でないと判断された残りの物体の画像データから選別対象物体であると判断し得る色彩的特徴量を抽出し、この色彩的特徴量に基づき異物であるか否かを判断し、
異物でないと判断された残りの物体の画像データから選別対象物体であると判断し得る丸さ・細長さなどの形状を表わす形状的特徴量を抽出し、
この形状的特徴量に基づき異物であるか否かを判断するようにした第1異物判断機能に、
さらに、搬送経路を撮影し得るカメラ装置で撮影された画像データの輝度情報に基づき物体を抽出し、
この抽出された物体の画像データにおける少なくとも面積・長さなどの大きさを表わす計量的特徴量に基づき物体が異物であるか否かを判断し、
異物でないと判断された残りの物体の画像データから選別対象物体であると判断し得る丸さ・細長さなどの
形状を表わす形状的特徴量を抽出し、この形状的特徴量に基づき異物であるか否かを判断するようにした第2異物判断機能を付加し、
且つ上記各異物判断機能部にて、異物であると判断された物体を、搬送経路上から除去することを特徴とする異物選別方法。