食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

アスコルバイオ 酸化で減衰しないビタミンC

安定型ビタミンC誘導体に関する特許です。岡山大学名誉教授の山本氏が発見し、林原社によって量産化されました。

ビタミンCはコラーゲンの構造を作るためにに必須の物質です。不足すると壊血病を引き起こす、人間が生きていくためには摂取することが欠かせない物質です。
ビタミンCはその他にも様々な生理作用を持ちます。例えば、肌の黒ずみの原因であるメラニンの蓄積を抑制する、細胞の抗酸化作用、風邪などの予防、といった効果があるとされています。そのため、多くの健康機能食品や化粧品に使用されています。
また、還元性を持つため食品の酸化防止剤としても広く使用されています。

 

このように様々な用途に使用されるビタミンCですが、還元性の高さゆえ分解されやすいという欠点を持ちます。●●mg配合などと表示してある食品の場合、法律上、賞味期限内は●●mg以上が入っていることを保証しなければなりません。そのため、製造時には●●mgよりも多い量、例えば1.5倍とか多めに配合するのが一般的です。しかし、その商品の成分や製造方法によってビタミンCが分解されやすく含有量が保証できないので●●mg含有ということが表示できないこともあります。
このようにビタミンCの分解されやすさは、大きな課題となっています。

山本氏は、培養細胞を使った実験をしていたそうです。その際に、細胞にビタミンCを毎日与えていたそうです。毎日与えないとビタミンCが分解され、細胞が培養できないからです。そこからの発想がすごいところです。なんとビタミンCの安定型誘導体を作ってしまいました。この誘導体はビタミンCの還元性に関わる水酸基グルコースを結合しているので酸化しません。そして、細胞内の酵素によって徐々にグルコースが離脱してビタミンCになります。そのため、安定型誘導体を培養細胞に一度与えておけば、徐々にビタミンCが供給されます。多くの研究者が培養細胞に毎日ビタミンCを与えなければならない不便さを当たり前の行為と考えていたことでしょう。発明者は当たり前と思わず解決したわけです。
安定型ビタミンC誘導体の用途は、培養細胞の培地だけにとどまりません。食品や化粧品の保存中のビタミンCの減衰を抑制できるだけでなく、ビタミンCが徐々に供給されるという特徴により効能を長続きさせることができます。

 

当たり前のことを当たり前と思わずに解決する、その大切さは耳にタコができるほど聞いたことがあるはずです。しかし、頭でわかっていても実際には容易ではありません。この発明のような具体例をたくさん学んで発想の引き出しを増やしていきたい、と思う次第です。


【特許番号】
P2926412
【名称】
α―グリコシル―L―アスコルビン酸とその製造方法並びに用途
特許権者】
株式会社林原生物化学研究所、山本 格(岡山大学名誉教授、株式会社アスコルバイオ研究所代表取締役
【課題】
 従来のL-アスコルビン酸糖誘導体の欠点を解消し、安定性に優れ、生体内でL-アスコルビン酸の生理活性を充分発揮し、しかも無毒で安心して利用できるL-アスコルビン酸糖誘導体の実現が強く望まれている。
【請求項】
直接還元性を示さないα-グリコシル-L-アスコルビン酸