食品特許を読みあさろう

食品関連の特許をアレコレ読んで紹介します

明治 地道な研究に支えられたヨーグルトR-1

明治ヨーグルトR-1に関する特許です。R-1はインフルエンザの予防になると、NHKの番組で放送されたことで話題になったことをきっかけに大ヒットした商品です。

「ヨーグルトは体にいい」というのは、大部分の人が共通に持っているイメージです。しかし「具体的に何にいいの?」と言われると、整腸作用やカルシウム補給以外はあいまいなイメージしかなかったのではないでしょうか? そのわりには強い健康イメージがあります。これは明治を始めとした各社の長年のマーケティング活動の成果でしょう。

明治はブルガリアヨーグルトで日本のヨーグルト市場を切り開いて拡大させてきました。それにとどまらず研究を重ねてきました。過去の特許文献を調べると、ヨーグルトに関する明治の出願が多数あります。中でも乳酸菌と免疫の関わりは、明治が長年研究してきたテーマのようです。例えば、免疫を弱めてアレルギー反応を緩和する、免疫を強くしてウィルス抵抗性を高める、といった内容です。そうした研究を続けて自社の強みであるヨーグルト分野をさらに強化してきました。R-1のヒットは、その地道な研究が実った結果と言えます。

一方で、ヒットの要因を考えると、NHKで特集されたことが大きいと思われます。食品は薬事法の制約から、効果効能を宣伝することができません。広告ではなく、広報として取り上げてもらうことが効果的です。明治がどのようなPR戦略のもとにNHKでのPRにつながったかは分かりません。しかし、R-1のヒットから学べることは、研究と広報をつなげることが有用でそれができる組織を作る必要がある、ということです。科学を扱う研究部門と、マスコミとの関係を扱う広報部門では、人の気質や組織の文化が異なるものです。この水と油のような部門をスムーズに連携させることは容易ではないと想像します。だからこそ達成できれば、研究を事業に結び付ける力で他社と差を付けられるのではないでしょうか?企業の研究部門の能力は、単に学術成果の高さだけでなく、組織全体との連携を考える必要があることを思い知らされる次第です。


【特許番号】
P5177728
【名称】
NK細胞活性化剤
特許権者】
株式会社明治
【課題】
NK細胞を活性化し、免疫力を高める食品由来の組成
【請求項】
L. bulgaricus OLL1073R-1およびS. thermophilus OLS3059をスターター菌として製造する、NK細胞活性化作用を有する発酵乳。

明治 ホエイプロテインを液中に安定的に分散させる

ホエイプロテインを高濃度で安定的に水中に溶解(分散)させる方法に関する特許です。明治の「スポーツミルク」に使用されている技術だと推測します。

筋トレやスポーツをした後に飲むプロテインの粉末、すごく飲みにくいものです。水や牛乳に入れてシェイクして飲むのが一般的かと思います。よく振っても粉が溶けないので口の中でザラついて、プロテイン特有のにおいと合わさってひどい味になります。その不味さはプロテイン初心者の大きなハードルになっています。

タンパク質、特に粉末に加工されたタンパク質を液体に安定的に分散させておくことは難しいものです。
発明者はホエイタンパク質を特定の温度以下で添加し混合し、得られた調合液を高温殺菌した後に均質化することによって、高濃度でもゲル化や凝集などを起こすことなく安定的に分散できることを見出しました。乳業メーカーの強みを活かした技術です。

この技術を使用して、ホエイプロテインが強化された乳飲料「スポーツミルク」を開発したのだと推測します。
「スポーツミルク」を実際に飲んでみると、プロテインが均一に分散しているのでザラザラした粉っぽさがなく、普通の牛乳と同じ感覚で飲むことができます。粉末のプロテインの不味さを、よくぞここまで美味しくしたものだ!と驚きました。素晴らしい技術です。
これなら従来の粉末プロテインを飲むことの手間や心理的な抵抗感を払拭できることでしょう。特許を読むと病院の流動食を想定しているようです。いずれにしろ派手に売れる性質の商品ではないでしょうが、どのように浸透させていくのか、マーケティング施策も観察していきたいなぁと思います。

【特許番号】
P5384333
【名称】
ホエイタンパク質を高濃度で含む液状栄養組成物およびその製造方法
特許権者】
株式会社明治
【課題】
ホエイタンパク質を従来よりも高濃度で含む液状栄養食品の開発
【請求項】
ホエイタンパク質を53℃以下の温度条件下にて添加して混合して、タンパク質と、脂質と、糖質とを含む調合液を得、該調合液を高温殺菌した後に均質化することにより得られる液状栄養組成物であって、
 タンパク質30~100mg/mlと、脂質20~100mg/mlと、糖質50~350mg/mlとを含んでなり、かつ組成物の熱量が1kcal/ml以上で、pHが4~8であり、
 前記タンパク質に含まれるホエイタンパク質が、組成物全体に対し8mg/ml以上の濃度で含まれ、
 前記タンパク質にホエイタンパク質を30重量%以上の割合で含み、かつ 液状栄養組成物の平均粒子径が1μm以下であることを特徴とする、液状栄養組成物。

味の素 成形肉を造る酵素トランスグルタミナーゼ

畜肉や魚介類の結着などに使われる酵素トランスグルタミナーゼについての特許です。この酵素は味の素社から「アクティバ」という商品名で業者向けに販売されています。

食肉加工業者は、アクティバを使って下の写真のような成形肉が作るなどしています。

トランスグルタミナーゼは生物に広く存在する酵素です。例えば、血液が固まるのはこの酵素の働きによります。それはトランスグルタミナーゼにタンパク質とタンパク質をくっつける働きがあるからです。もう少し詳しくいうと、タンパク質のグルタミン残基に作用してタンパク質同士を結合させる反応を触媒するのです。

食品では、タンパク質素材をくっつける結着剤として使用されます。例えば、小さい肉片にトランスグルタミナーゼの粉末をまぶして固めておくと、大きなステーキ肉ができます。成形肉ってやつです。また、小さい海老の身をくっつけて大きな海老の身を作ることもできます。つなぎ目は素人の方にはほぼ判別できません。
その他、かまぼこの製造時にすり身に混ぜ込めば、食感の固いかまぼこができます。麺の生地に練りこめばコシのあるプリッとした食感になります。
さらに近年では分子ガストロノミーという高級レストランの前衛的な料理にも使用されています。

トランスグルタミナーゼは味の素社と天野製薬社が、新規な微生物由来のトランスグルタミナーゼを安価に生産することで工業化されました。従来から知られていた動物由来のトランスグルタミナーゼは抽出等が困難なため、供給量やコスト面で食品への使用は現実的ではありませんでした。
また、動物由来のトランスグルタミナーゼはカルシウムイオンがないと働かない性質があります。カルシウムイオンには特有の風味があるなどの問題があります。しかし、発見されたトランスグルタミナーゼはカルシウムイオンがなくても働く性質がありました。食品への利用に有利です。

reaction mechanism of tTG
トランスグルタミナーゼはその機能が従来から知られていた酵素でした。この発明のすごいところは、トランスグルタミナーゼの機能を様々な食品に利用できることを見出した点だと感じます。基礎的な研究の知見をどのように利益に結び付けるか、そのストーリーを描くのは難しいことです。
研究起点の事業構想力と、それを支える特許の巧さを見習いたいなぁ、と思う次第です。

【特許番号】
P2572716
【名称】
新規なトランスグルタミナーゼ
特許権者】
味の素株式会社、天野製薬株式会社
【課題】
従来トランスグルタミナーゼの供給は動物に由来しているため実用性を考慮した場合、供給量、供給費用、保存費用、精製の困難さ等の種々の面から不利でありこのままでは産業上の利用への可能性はほとんど考えられなかった。
従って、本発明の課題は供給量、コストの面、精製の容易さ等のいずれの面からも問題はなく、しかも反応にCa2+を必要としない点等、実用性の高い新規なトランスグルタミナーゼの提供である。
【請求項】
ペプチド鎖内のグルタミン酸残基のγ-カルボキサミド基のアシル転移反応を触媒するトランスグルタミナーゼであって、Ca2+に非依存性であり、分子量が約38,000~約41,000であり、至適温度が45~55℃付近であり、至適pHが5~8付近にあり、pH5~9付近で安定であり、ベンジルオキシカルボニルグルタミニルグリシン、ベンジルオキシカルボニルグルタミニルグリシンエチルエステル、ベンジルオキシカルボニルグルタミニルグルタミニルグリシン、ベンジルオキシカルボニルグリシルグルタミニルグリシルグリシン、ベンジルオキシカルボニルグリシルグリシルグルタミニルグリシンのいずれかに作用する性質を有することを特徴とする新規なトランスグルタミナーゼ。

秋田県立大学 レタスのカリウム含量を減らす栽培法

カリウム含量を低減した野菜を栽培する為の肥料と栽培方法についての特許です。

現在、日本には人工透析を必要とする腎臓病患者が約30万人います。高齢化の進行などに伴い、患者数は今後も増加の見込みです。あるいは人工透析をしていなくても、症状が重篤にならないよう食事療法を行っている人もいます。腎臓病の食事療法というのは、摂取するタンパク質やナトリウム、カリウム量を制限することで腎臓にかかる負担を減らして重症化を防ぐ、というものです。好きなものが食べられない、大変な苦労を伴うことが想像できます。

カリウム含有量の多い食品として葉物野菜が挙げられます。そのため、食事療法中の腎臓病患者は、サラダなどをたくさん食べることができません。

ところで、葉物野菜にカリウムが多いのはなぜでしょうか?それは肥料や土壌からカリウムを吸収して蓄積するからです。ならば、カリウムを与えなければカリウム含量が低い野菜が作りだせるのでしょうか?

実はそう簡単な話ではありません。

作物の生育にとって重要な肥料の3要素は「リン、窒素、カリウム」であると言われます。カリウムが不足すれば、植物は生育できないのです。カリウムを与えずに野菜を作る、など常識的に言って考えられません。

Potassium Spectrum.jpg

しかし、発明者はカリウム含有量が低減された葉物野菜を栽培する方法を検討しました。常識への挑戦です。

まず、土壌や地下水にはカリウムが含まれるので、栽培方法として水耕栽培を選択しています。最近流行りの「植物工場」を想定しているわけです。

その上で、栽培期間を前半と後半に分けます。

前半にはカリウムを含む通常の肥料を与えて成長させます。

後半はカリウムを含まない肥料を与えます。ただカリウムを抜いただけでは成長できず枯れてしまうので、代わりにマグネシウムを与えます。すると、成長を止まらないことを見出しました。そして、成長に伴ってカリウム含量が低下することがわかりました。

この特許の方法を利用して、複数の企業ががいわゆる「植物工場」で低カリウムのレタスなどを生産し、販売しているようです。

「植物の成長にはカリウムが必要」というのは小学生の教科書にも乗るような一般常識です。この特許の成果は、常識を打ち破って、実際に商品化につなげた素晴らしい仕事です。

「常識を疑え」と口で言うのは簡単です。しかし、実際に仕事をしていると、数多の常識や先人の知見を生かさなければ仕事は進められません。いちいち疑っていると効率が悪すぎます。その中で「疑うべき常識」を見つける必要があります。そのためには科学的な思考力はもちろん、常識を打ち破った先にどのようなニーズを創出できるかを描く力が求められるのではないでしょうか? 

研究と商品を結び付けるうえで、大いに参考にしたいなぁと思う次第です。

【特許番号】

P5300993

【名称】

カリウム野菜を栽培するための水耕栽培用肥料及びその肥料を用いた低カリウム野菜の水耕栽培方法

特許権者】

公立大学法人秋田県立大学

トックベアリング株式会社

【課題】

ナトリウムの含有量が増えるのを抑えながら、カリウムの含有量も少なくして、腎臓病患者でも安心して食することができる低カリウム野菜を栽培するための水耕栽培用肥料及びその肥料を用いた低カリウム野菜の水耕栽培方法を提供することである

【請求項1】

実質的にカリウム及びナトリウムを配合せず、カルシウム、マグネシウム、リン、及び窒素を主成分とし、これら主成分を水に溶かしたときのpH値が5~9になる低カリウム野菜を栽培するための水耕栽培用肥料。

【請求項2】

上記主成分のうちのマグネシウムの含有割合は、その下限値を5重量%とした請求項1記載の低カリウム野菜を栽培するための請求項1記載の水耕栽培用肥料。

【請求項3】

栽培する野菜に応じて種まきから収穫までの期間をあらかじめ設定し、収穫から遡った所定の期間を最終栽培期とし、この最終栽培期の前の期間を初期栽培期とし、上記最終栽培期は、上記請求項1又は2記載の水耕栽培用肥料を用い、上記初期栽培期は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、及び窒素を主成分とする肥料を用いる低カリウム野菜の水耕栽培方法。

ロッテ Fit'sはコミュニケーションツールとして設計されている

ロッテのガム「フィッツ」の包み紙についての特許です。

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ロッテのフィッツはユニークなCMが話題となったヒット商品です。

プロモーションがキャッチーでしたが、ガムの柔らかい食感や、今までにない斬新な包み紙も面白いものです。

この商品に感じたのは、ロッテがガムを「コミュニケーションツール」と定義して企画・開発したのでは?ということです。(以下、憶測です。)

ガムを食べる理由はたくさんありますが、その中で「ガム食べる?」とガムを人に勧めるシーンを想定します。すると、ガムの価値は「美味しい」「眠気が覚める」「虫歯にならない」ではありません。

「コミュニケーションを円滑にすること」が価値になります。

 

実際のマーケティング施策は、ガムから始まるコミュニケーションが円滑になるように設計されているように思われます。「ガム食べる?」の後のコミュニケーションが容易に想像できます。例えば、、

佐々木希かわいいよねー」

「あの踊り、お前ちょっとやってみろよ!」

「このやわらかい食感どう?好き?」

「これ、味が変わるらしいよ」

今後のマーケティング 施策もコミュニケーションの促進という軸で行われるものと予想します。

包み紙にも工夫が凝らされていて、特許が成立しています。

この包み紙なら「ガム食べる?」って勧めるときに相手が「何これ!」って感じるインパクトがあります。「ちょっと見せてよ~」って会話にもつながります。

また、1枚取り出すとガムの一部が露出してしまいます。「後で食べるよ」ってことにはならず、その場で食べざるを得ません。これも体験の共有を通じてコミュニケーションを促進しています。

  

開発の現場では「美味しい」とか「健康にいい」とか機能的な価値に囚われがちです。

フィッツは「コミュニケーションを促進する」という情緒的な価値と、製品のスペックを見事につなげています。そして抜け目なく特許で他社がまねできないようにしておく、という開発の仕事もきっちりやっています。

近視的になりやすい技術者、開発者の一人として大いに参考にしたい商品です。

そういえばタレント変更したみたいですね。

 

【特許番号】

P5401040

【名称】

包装体

特許権者】

株式会社ロッテ

【課題】

板状食品をコンパクトに収納するとともに、片手が塞がっている場合でもその板状食品を容易に取り出して喫食することのできる包装容器の提供を課題とする。

【請求項】

それぞれ包装紙により包装した複数の板状食品を横方向に並べて包装器材に収納した包装体において、

 上記包装器材が、主板の下縁に底板を介して前枠板を連設し、該主板の左縁に左側板を介して左枠板を、該主板の右縁に右側板を介して右枠板を連設し、また、該主板の上縁に連結板を介して蓋板を連設した台紙を組み立てて、該主板、底板、左右の側板、並びに前及び左右の枠板によって収納部を形成してなり、 上記複数の板状食品をそれぞれ包装する各包装紙が、上側の抜き取り部と下側の固着部との間にミシン目を有し、そのミシン目を切断し抜き取り部を抜き取って開封可能に構成され、

 上記包装紙により包装した複数の板状食品が、上記包装器材に対して、それぞれ各包装紙の上記固着部において固着されており、 各包装紙の上記固着部の上下方向の長さが上記前枠板の上下方向の長さより大きいことを特徴とする包装体。

味の素 グリシンの睡眠改善効果は偶然に発見されたのか?

味の素の睡眠改善用サプリメント「グリナ」についての特許です。

グリナは睡眠を改善する為の健康食品で、アミノ酸グリシンを主成分としています。グリシン自体は日持ち向上剤などの用途で広く様々な食品に使用されています。この特許はグリシンの睡眠改善剤としての用途に関するものです。ですから、商品に睡眠改善を謳わなければ味の素の特許を侵害せず、グリシンを販売することはできます。

発明者はアミノ酸の機能性研究を行っていたそうですが、「睡眠を改善する食品」を探していたわけではないそうです。社内試験でグリシンをたまたま摂取し「ぐっすり眠れるようになったかも?」という気付きを得て、研究開発を進めたようです。

(味の素ホームページ:開発者からのメッセージ

この特許の公開広報(WO2005/067738)を見ますと、グリシンの機能として、睡眠改善に加えて、便通改善、不快な香りのマスキングを挙げています。(最終的に特許として成立したのは睡眠改善だけですが。)このことから、味の素がグリシンの機能について多角的な研究を行っていたことがわかります。

 

グリシンは食品素材として古くから広く使用されいる、ありふれた素材です。グリシンの製造方法は一般に化学合成法ですから、味の素社は自社で製造せず化学系メーカーから購入していると推測します。つまり、味の素社がグリシンという素材そのものに関して大きなアドバンテージを持っていたわけではないのです。味の素と同じようにグリシンを購入して使用している他社にも、グリシンの睡眠改善の効果を発見するチャンスが十分にあったわけです。しかし、実際にはアミノ酸研究に強みを持つ味の素が発見しました。

 

研究員という個人レベルでみると、偶然の発見と言えるかもしれません。しかし、研究開発を行う組織としてみると偶然の発見とはいえません。様々なアミノ酸について多角的に研究していたこと、偶然の気付きをきちんと検証できる研究能力、研究成果を具体的な製品やビジネスに落とし込む能力を備えていたのです。だからこそ、偶然の発見を逃さなかったのだと思います。

特許文献から、味の素社の研究開発力の高さがうかがい知れます。

余談ですが、グリシンは一般的な食材ではクルマエビなどの甲殻類に多く含まれています。グリナは1袋3000mgのグリシンが入っていますが、このグリシン量はクルマエビ約200g分に相当します。ぐっすり寝たいときは夕飯にエビ天やエビチリを食べたらいいかも知れませんね。

 

【特許番号】

P4913410

【名称】

グリシンを含有する食品およびその用途

特許権者】

味の素株式会社

【課題】

従来にない形態のグリシン含有食品を提供し、グリシンに基づく新たな機能を有する食品を提供する

【請求項】

1食当たりの単位包装形態からなり、該単位中に、グリシンを1食摂取量として0.5g以上含有する、熟眠障害改善剤。

ユーグレナ ミドリムシを食べてプリン体吸収を抑える

ミドリムシユーグレナ)の健康機能性についての特許です。

最近、ミドリムシを使った食品が増えてきました。

私が初めて見かけたのは、タブレットの錠剤だった気がします。その後、ミドリムシクッキーか、ミドリムシ青汁を試しました。

最近では、大手メーカーがミドリムシを素材として使用し始めました。協同乳業からユーグレナヨーグルト、UHAからユーグレナガム、ユーグレナのど飴などです。

このように新規な健康食品用素材として、ミドリムシは注目されています。

では、ミドリムシを供給しているのは誰なのでしょうか?

それは株式会社ユーグレナという東京大学発のベンチャー企業です。2012年に東証マザーズに上場し、直近の業績は好調のようです。

 ミドリムシカンパニー euglena

すごいと思うのは、健康機能素材をゼロから開発したところです。

最初、健康機能素材としてのミドリムシは次のような状況でした。

  • 素材の生産方法が確立されていなかった。
  • 健康機能素材として全く認知されていなかった。(食品としての認知もなかった。)

この2つの問題を解決したわけです。

 

現在は、ミドリムシを次のようなメリットがあるとしています。

そして、この2つに加えて、「健康機能性がある」ということを研究しているようです。発明者は、ミドリムシプリン体の吸収を抑制してくれる効果がある、としています。ミドリムシを食べると、痛風予防や痛風の症状軽減になる、と述べているわけです。(ただし、特許を取得しているからといって、本当に効果があるかどうかはわかりません。特許文献を真に受けてはいけないのです。)

また特許文献からは、特許取得を知財の専門家がサポートしていることが読み取れます。

例えば、、、

大学の研究者は、特許申請する際に学術論文を投稿する際のようなきっちりした証拠をそろえようとする場合が多いのです。しかし、この特許の実施例は試験管内でプリン体ミドリムシ加工品に吸着することを示しているだけで、投稿論文にはなりえないものです。特許取得を目指すなら、この実施例のような簡単な実験を短時間にこなした方が効率が良いのです。

研究が進めば「プリン体の吸収を抑える」といったような具体的な健康機能性をアピールできるようになるかもしれません。

 

以上のようにユーグレナ社はミドリムシを夢のある食品素材に変えたスゴイ会社です。

今後もさらにミドリムシの価値を高めていくことでしょう。

ミドリムシがヒットするのだから、自分たちも新しい健康機能素材を開発できるはずだ!と勇気づけられた業界関係者も多いのではないでしょうか?

 

ただし今後のミドリムシについて少し冷静に見てみようと思います。

ミドリムシと同じような微細藻類は、他にも健康機能素材になっています。クロレラスピルリナ、ドナリエラなどです。定着はしていますが、健康機能素材の中ではそれほどメジャーなものではありません。コラーゲンやカテキンのような地位を獲得できるかは疑問です。

また、日本国内では「ミドリムシ」というキャッチーな名前がヒットの要因になったことでしょう。しかし海外では名前のキャッチーさが利用できないと思われます。『ユーグレナ社が中国に進出した』という新聞記事がありましたが、日本と同じやり方は通用しないことでしょう。

日本でミドリムシが一過性のブームで終わってしまうと、企業としての成長も止まってしまいます。

 

今後、ユーグレナ社がどのような戦略をとるのかワクワクしながら注目したいと思います。

 

【特許番号】

P4865838

【名称】

プリン体吸収抑制組成物

特許権者】

株式会社ユーグレナ

【課題】

毎日の食事により、その飲食品中から摂取され、体内に取り込まれるプリン体の、その腸管からの吸収を抑制するための組成物であって、効果が高く、且つ、健康食品、サプリメントなどとして、安心して摂取することができるものを提供する

【請求項】

ユーグレナを高圧破砕処理する工程と、前記高圧破砕処理より得られた破砕物から、可溶性成分を除去する工程と、を行うことにより得られたユーグレナ加工物を有効成分とする、プリン体吸収抑制組成物。